短編小説置場。

□それは所謂
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(いけない)

「…ルーク」

その声から何かを感じ取ったのか、ルークは慌てて手を引っ込めようとした。

「ぇあ、ご、ごめ」

のを自分の手が阻止した。
目の前の少年の動きが止まる。
髪を切って以来、それが元の大きさであったかのような大きい瞳が更に大きく見開かれる。

……だからいけないと言ったのに。

それはこの子供に対してか、自分にか。

「…ジェ、イ」

名前を呼ぶ声が途切れた。
自分が塞いだ。
その名を呼ぶ出口を、これ以上名前を呼ぶなと言うように。

柔らかい。

冷静な頭で言えたのは皮肉にも馬鹿馬鹿しいこんな感想だった。
ただ触れただけの互いの唇が、離れた。

「……分かりましたか?貴方がその身で感じ取った通り、熱なんてありませんよ」

なんて、無理矢理こじ付けて。

「うっ、わ!!」

密着していた体を突き飛ばされる。
多少は強いと感じられるその力も、所詮は軽く体が仰け反る程度で。
体同士が離れたと同時、ルークはそのまま逃げるように走り去っていった。

こちらを振り返ることはせずに。

ジェイドは知らない間に右手で額を押さえていた。
自身の熱を計るように。

実際は、今先程の自分の行動をやり直せるのなら直したいと後悔するように。
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