短編小説置場。

□風、光る
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穏やかな陽射し。
暖かな愛しい人の体温。
それは何と、幸福な――





風、光る





「いた」

人に聞こえるか聞こえないかくらいの声が出た。
と言っても周囲には誰も居なくて、それをちゃんと聞き取った人など居るわけがないのだが。
もし聞き取ったとするのなら…丁度今、視界に入っているピンク寄りの肌色をした丸い物体くらいだろうか。

グランコクマ宮殿の、客間。
幾度となく世話になってきたこの部屋の、絨毯が敷き詰められた床に。
本来なら飼い主の部屋に居るはずのブウサギが丸まって寝息を立てていた。

「何でこんなとこで寝てんだよ…」

急にいなくなった皇帝のペット。
メイド達から「陛下が気付かれてしまう前に」と縋る様に頼まれて、青年ルーク・フォン・ファブレは現在に至っている。
小言を呟きながら部屋へと足を踏み入れる。
さて、見つけたはいいがこれからどうやって部屋に連れていけば良いのだろう。
運ぶにしても、これを一人で抱えていくとなるとやはり至難の業。
そうなるとやはり起こすのが一番効率がいいのだが…。
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