短編小説置場。

□甘口コメンテーター
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それは貴方だけに湧くとびっきりの悪戯心。

――問答無用で受け取っていただきます。






甘口コメンテーター





「ルーク、これは一体なんですの?」
「っ、げ!」

どこぞの教育ママを連想させるようなナタリアの一声からそれは始まる。
示されたのは彼が食べ終えたと言って後片付けの係りに手渡した、皿であった。

「あ、また人参残しちゃってるー!ひっどいなぁアニスちゃんの愛情たっぷりなカレーを残すなんて」

ぶーぶー、とブーイングを起こしているのは食事当番だったアニスだ。
隣ではルークと同じく人参嫌いのティアがまるで苦しみを共有するかのように苦しげな顔をしていた。
そんな三人からの畳み掛けるような言葉(一人は同情)に、ルークは詰まりながらも反論した。

「しょ、しょうがねぇだろ!嫌いなもんは嫌いなんだからさ。それにそれ以外はちゃんと食べたし!」
「駄目ですわよ。折角アニスが栄養面も考慮して作ってくださったと言うのに…残さずに食べて下さいな!」
「そうそう、頑張ってよルーク!ティアだってちゃんと食べたんだからね」
「…頑張って」

有無を言わさず赤い塊が幾つか見られる皿を返却された。
姉のような母のような三人はそのまま他の食器類を洗いに川辺へと向かっていく。
残ったのは皿とスプーンを片手ずつに唸り続けているルークと自分。
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