短編小説置場。
□そしてあなたは今も
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ヴァンを倒し、アブソーブゲートから帰還したあの日。
あれからもうすぐ半月が経過しようとしている。
そしてあなたは今も
自分の執務室に篭ること丸一日。
あらかたの書類の整理が片付いて、ジェイドは小さく息を吐いた。
漸く休める…そう思って人知れず肩の力を抜いていると。
「おいジェイド、まだ仕事は終わらんのか?」
…やっとのことで手に入れられそうだった安息を壊す人間が訪ねてきた。
「…大体は片付きましたよ。一人でゆっくりと休憩がしたいのでさっさと宮殿に戻ってください、陛下」
「何だ、折角激励に来てやったのにその言い草はないだろう」
「激励ではなく落ち着いた休息を頂きたいものですね」
相手が一国の皇帝であるとは思えないほどの嫌味な発言が続く。
しかし向こうもこちらの性分は十分に心得ているもので、あまりそれを気にすることもない。
現に今も自分の願いは関係無しに勝手にソファに腰を下ろしている。
「まぁそう堅いことは言うな」
「………」
もうこうなってしまってはこれ以上反抗するのも面倒くさい。
はぁ…と盛大にため息を吐いてから、休憩の為に紅茶を淹れる準備を始めた。
そうこうしている間にも向こう…ピオニーからはまるでマシンガンの如く言葉が放たれる。
それを最初らへんまでは適当に受け流していたのだが。