短編小説置場。
□それは所謂
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「うっ、わ!!」
信じられなかった。
密着していた体を思い切り突き飛ばし、そのまま逃げるようにその場を離れて行った。
…後ろの人物へは振り返らずに。
それは所謂
崩壊セントビナー。
かつて花や緑に溢れていた街は外郭大地崩落の際に大きな被害を受けた。
死者が出なかったことは不幸中の幸いだろうか。
いや…本来なら街はそのまま魔界の障気の沼に飲み込まれていたはず。
だからこそ今この街の状況は奇跡にも近いものがあり、この街を救ったとされる若者達は賞賛に値する者達なのだ。
街中では人々の復興に勤しんでいる様子があちこちで見られる。
それを街の端でただ眺める一人の軍服を身にまとった男…ジェイド・カーティス。
彼も、この街を最悪の事態から回避させた若者の一人である。
しかし本人はそんな事をあまり気にしていない様子で。
ただ、この街の光景を眺めていた。
そして、ぽつりと。
「……大したものです」
それは自分に対してではなく。
「おーい、ジェイドー!」
少年の質が残る声と共に駆け寄ってくる人物。