捨てられ

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信じることが怖くて、私は倒れ込んでしまう。うしろから追ってくる数々の手。私はきっと逃げられないんだ。はっきり、理解した。足も手も動かない。何も声が出ない。誰も手をかしてくれない。叫べない。助けて、それすらもままならない。追ってくる数々の手。首に手が巻きつく。苦しい。誰か…。




じりり…。ガチャ。


またヤな夢。また寝れない。でも、バイトがある。講義がある。濃いブラックと甘い香水の匂いで目を覚ます。長い黒髪を書き上げてお風呂にお湯を張る。煙草の煙が朝のけだるさを運んでゆく。
疲れてるんだ。あんな夢を見るのは、きっと、そのせいなんだ。
最近ずっと大人の男の体を食べている。そのせいだ。一昨日は春樹も。昨日は雄矢。でも何より愛してる、のが、明だ。今日、今夜、何週間ぶりかのデート。明だけ、私の本気。
いままでの恋が捨てられていた、私を、拾ってくれたのが、明。いままでは私が拾って育てて捨てられていた。結局あきてしまうんだ。みんな、みんなあきてしまうんだ。明は違う。そばにいて安心したのもはじめてだ。抱きしめられて、抱きしめて安心したのもはじめてだ。明は私がはじめて自分を素直に現せた
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