短編
□ラバー
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たくさんひどいこと、していいから。
なんでも受け止めるから。
ねぇ
だから。
ラバー
揺れる身体に合わせて浅い呼吸を繰り返す。
アスランは一度も此方を見ない。
けれど、カガリは揺れる視界でずっと彼を見ていた。
「ぁす…んっ」
話すことは許さないとでも言うかのように唇に噛みつかれる。
唇が切れて血の味がした。
それもアスランの熱い吐息に飲み込まれて、深いキスに目眩を起こす。
「んっ…ふ」
「逃げるな」
逃げても逃げても追いかけてくる舌に頭は真っ白になっていく。
あぁ、飛ぶな。
そう思った瞬間、執拗なキスが終わった。
「やっ、あぁぁっ…ぁ」
腰から全身に痺れが走る。
体が震えて、頭で何かが弾けた。
そして遠退いていく意識の中で、アスランのことだけを思った。
***
意識が戻るとまだ身体が熱かった。
おそらく飛んだのは一瞬だけだったんだろう。
ふいにアスランと目が合う。
でもすぐに目は逸らされて、覆い被さっていた体が離れていく。
寂しくてアスランの腕を掴むと、その動きが止まった。
「どこ…いくん、だよ」
少し話しただけで頭がクラクラする。
息が続かないせいで、うまくしゃべれない。
「部屋に帰るよ」
「ど、して…?」
「ここにはいられない」
「ここに、いろ」
「帰るよ」
「いろよ…ぉ」
背中を向けたアスランが振り返る。
その顔は無表情なのに、瞳は何かをカガリに訴えてくるようだった。
アスランがこの部屋に来たときから、ずっと。
カガリは重たい腕を持ち上げて、そっとアスランの頬に触れた。
「そんな目、するなよ」
「っ…」
「私がいる…だろ」
寂しそうな目はやめて。
私まで辛くなる。
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