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□嘘つき
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寒い、寒い寒い。

こんな雪の降る夜に女の子を1時間も待たせるなんて。

お詫びに高いお酒でも買ってもらおうかしら。

そう考えながら、再度腕時計で時間を確認した時、不意に後ろから頬に何かが押し当てられる。

温かさを感じたと同時に私は振り返った。


「遅くなってごめんね」

これはお詫び。

そういって渡されたのは、さっき頬に押し当てられたもの。

そんな顔されたら、怒れないじゃない。

狡い人。大嫌いよ。






《嘘つき》







「どうしてココアなのよ」

「ん?嫌いだった?」

「そうじゃないけど。私はお酒の方がよかったわ」

「えー僕ワンカップ飲んでる女の子と並んで歩きたくないよ」

「誰もワンカップなんて言ってないでしょ、もっとオシャレなのもあるじゃない」

「そうなの?僕お酒詳しくないからなぁ」


くだらない話をしながら二人で並んで歩く。

向かう先は、いつもと同じホテルの一室。

「体が冷えてる、先にシャワー浴びといで」

ココアで温まったって言っても聞いてくれなくて、私は着いて早々シャワールームに押し込まれた。

いつも優しいくせに、たまに強引。

それを無意識にやってのける彼は天然のタラシなのかもしれない。



私がシャワー室を出ると、彼は私に背を向けて、隠れるみたいに電話していた。

「うん・・・そうだよ。今会議が終わったから・・・そう。明日は帰るから・・・おやすみ」

電話の相手に向けるような甘い声を私はあまり聞いたことが無い。

「奥さん・・・?」

私の声に彼は弾かれたように振り返り、そして悲しそうな顔で笑った。

どうしてそんな顔ばかりするのかしら。

それが見たくなくて私はここにいるのに。


「カイト・・・」

ベットに座ったままの彼に近付いて、噛み付くようなキスをした。

ぐっと力をかければ簡単に押し倒せた体で受け入れてもらえていることがわかる。

キスしながら彼の纏う衣服を剥いでいくと、そっと大きな手が私の腕を掴む。

温かい手の平とは別に冷えたものを感じて目線を移せば、そこにあったのは、彼の・・・彼等の愛の証。

銀色に光る指輪がやけに眩しかった。


「あんたなんか大嫌いよ」

「知ってる・・・ごめんね、めーちゃん」

そういって私の湿った髪を撫でて、また悲しい顔。

別に謝ることなんてないわ。

私が望んで、あなたも望んだ。

二人の意志がある、それだけで十分でしょ?


「カイト」

「ん?」

「・・・何でもない」

(私のこと、好き?)


聞きたいって思ったことは何度もある。

だけど、返事が怖くて聞けなかった。

だって彼のことをほとんど知らないから。


彼の名前と、結婚していること。

そして、私に『めーちゃん』って幼い子供みたいなあだ名をつけて、普段はそう呼ぶのに、ベッドの中では『メイコ』って呼ぶこと。

私の知っているカイトはそれだけ。

いくらかき集めても、彼の愛する人には敵わない。



「何を考えてるの?ちゃんと集中して・・・」

真相に近づくにつれ、暗くなっていく思考を彼のキスが断ち切る。

いつもいつも私はこうして彼に騙されていく。


「メイコ・・・っ」

「んっ・・・や、あぅ」

激しく揺れるリズムの中で、彼の左手が私の頬を撫でる。

熱い。

彼の体は溶けそうに熱い。

薬指のそれも、同じだけの熱を持っている。

形だけの愛の証なんて、この行為の熱で私と一緒に溶けてなくなってしまえばいい。

彼を縛るものなんて全部なくなってしまえばいい。

そうすることであなたが心から笑えるのなら、私はなんだってする。

だって、大嫌いなんて嘘だもの。













****

アダルティな不倫系のお話が書きたかったけど、なんだかよくわからないことになってしまいました

設定はカイトが若社長でめーちゃんが大学生くらい

出会いは、カイトの車に引かれそうになった子供をめーちゃんが助けたことがきっかけ

奥さんはミクのイメージです
幼なじみでカイトは実の妹みたいに可愛がっていて、最近やっと結婚した新婚さんだけど、何となく気晴らしというか家に帰りたくない反抗期カイトっていう設定

年齢はカイト>メイコ>ミク です

ミク高校生の若奥様

カイミク←メイだけど、精神的にはカイメイで

なんか不倫な雰囲気出てないですね・・・難しい


20110210

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