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□カミングアウト
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「うわ、重い…」







なぜこうなっているのかというと。
お昼ご飯を済ませたあと、国語の課題を出しに職員室に行った。
失礼しました、って言おうとしたら担任に呼び止められて。






「苗字!お前社会科担当だろ?
 これ資料室に持っていってほしいって言われたんだ。
 だから頼んだ、ちゃんともとの場所に戻せよ」


「え、ひとりでですか!?」

「誰かに手伝ってもらえ。
 頼んだぞー」







そして渡された、大量の資料。
ここから階段を上がると、真逆にある資料室。
そこまでひとりで…?
早めにお昼ご飯を済ませたからまだみんな食べてるし。
誰かって言われても困るよ、先生!






…苗字?

「あ、笠松先輩こんにちは!」

随分と大量だな。
 持つよ

「そんなっ、大丈夫ですから!
 笠松先輩はお昼ご飯食べてください!」






売店で買ったんだろう、笠松先輩が持つビニール袋の中には
サンドイッチと野菜ジュースが見えた。
健康に気使ってそうだもんね。
私なんて今日のお弁当、油物ばっかりだったのに。






いいって、どうせこれだけだし






そう言って笠松先輩はにっ、と笑って見せた。






「じゃあ、お言葉に甘えて…」

よし、全部よこせ

「全部!?
 大丈夫です、半分持ちますから!
 わっ、待ってください笠松先輩!」










「えーと、これはここで…」






結局、笠松先輩に全部持たせてしまい、ここは資料室。
たくさんの資料が並んでいて、頭が痛くなる。






オレの分、全部終わったけど






そのうえ、戻す作業までしてもらって。
優男過ぎます、笠松先輩。






「ありがとうございます!
 助かりました!
 私は最後のひとつなので…」






最後のひとつをよいしょ、と腕を最大限に伸ばして戻そうとするけど
あとちょっとの所で届かない。
うう、あと3センチでもあれば…!






「あれ、」






そのとき、私の手から資料が消えた。
後ろを見ると、腕を伸ばして資料を戻してくれている笠松先輩。






「あ、すいません!」

なあ、苗字

「はい!」

オレ、苗字のこと好きなんだけど










カミングアウト

笠松先輩、どうしたんスか?
 なんかスキップしてるっス…

「さあね!
 ほらきーちゃん、練習始まるよ!」

あ、はいっス!



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