仁亀百色玉手箱〃

□ようこそ!preciousへ【番外編】
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その夜、俺は仁と一緒に滝沢オーナーのnew『precious』へ行った。


new『precious』の前は開店祝いの花輪がトコロ狭しと飾られていていた。




店内に入ると耳を劈くクラブサウンドが鳴り響いて俺は思わず持ってきた花束を脇に抱え両手で耳を塞いだ。



j「オーナー!」


仁が、店の奥で来客の応対をしている滝沢オーナーに声をかけた。


滝沢オーナーは仁の声に気付いてお客様に一礼すると、俺達の居る方へ人混みを掻き分けてやって来た。


滝「やぁ、久しぶり、来てくれたンだね笑」



滝沢オーナーはいつもと変わらない優しい微笑みを浮かべて俺に話しかけた。



j「俺、着替えて中ぁ、入りますね」



仁は滝沢オーナーに言うと奥へ入って行った。



k「オーナー、new『precious』開店おめでとうございます!これ、小さいですけど・・・」


俺は持って来た花束を滝沢オーナーに渡した。




滝「ありがとう!綺麗だね、俺の好きな色だよ。コレはオーナー室に飾らせて貰うね」



オーナーはそう言って俺からの花束を嬉しそうに受け取ってくれた。


滝沢オーナーは相変わらず素敵な人だ。




k「前の店とは・・・だいぶ違いますね?」



俺が店内を見回しながら言うと、滝沢オーナーも俺と同じ様に店内を見回してから言った。


滝「今度はホストクラブじゃないからね笑 普通のクラブにしたんだ。」

k「あ、だから男の人もいるのか!」



俺はさっきから違和感を感じていた理由を知って「なるほど!」と、大きく頷いた。




滝「仁には世話になったんだよ、ここの頭金の殆どはあいつが出してくれたンだ」


滝沢オーナーはそう言いながら、カウンターの中でシェイカーを振る仁に目をやった。


k「仁が?」


滝「うん。前の店が焼けた翌日から、自分の顧客を回って資金援助を頼み込んでくれたんだ」


俺は、preciousが焼けてからしばらく家に帰らなかった仁のコトを思い出した。



k「そう・・・だったンだ。 ソレであの時帰りが遅かったりしたンだ・・・仁も言ってくれたら良いのに・・・」


俺が呟く様に言うと滝沢オーナーは柔らかく笑って言った。


j「仁はそういうの、言わないから笑 他人(ひと)の為に何かしてるとか公言しないだろ」

k「確かに。・・・そう、かも・・・。」




 俺は仁を見た。





煙草と人混みの薄煙の中、カウンターの中でシェイカーを振る仁は凄くカッコよくて、


ホストをしていた頃の仁とはまったく別の男の匂いがした。



k「仁・・・かっこいいなぁ〜・・・//」


俺が仁に見惚れて居ると滝沢オーナーが言った。


滝「仁、カッコいいでしょ?惚れ直しちゃう笑」


k「え?!聞こえました?//」



俺は心の中で呟いたつもりだったけど、思わず口を付いて出てたみたいだ//。




マツコ「秀ちゃあぁぁ〜〜ん!おめでとうぉ〜♪」


俺が恥ずかしがっていたら、マツコさんが大きな真っ赤なバラの花束を抱えて滝沢オーナーに抱き着いていた。


滝沢オーナーはマツコさんにすっぽりと、覆われていつ感じで端から見たら襲われている様にしか見えない。



俺はその様子を言葉も出ず見ていたが、そんな俺の存在に気付いたマツコさんと目が合った時には



思わず「ゴクッ」っと息を呑んだ。
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