仁亀百色玉手箱〃

□love song (君の歌・君の声)
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北大路さんに会えたのはそれから5日目の事―

しかも、場所もこちらで指定してわざわざ来てもらった。


k「本当にすみません!わざわざ出向いて頂いて…」
北「いやいや、気にしないでくれ、呼び出したのは此方なんだから。」

北大路さんはそう言うと笑って握手をしてくれた。


北「君が赤西仁クンだね?はじめまして。北大路です!」

北大路さんは、俺と握手した後、すぐさま隣に居る仁に挨拶した。


j「はぁ…どうも。赤西です」


仁は相変わらずのぶっきらぼう振りだったけど、北大路さんは気に止める様子もなく笑って仁と握手した。


k「あの…せっかく来て頂いたのに誠に申し訳ないんですが、時間が30分も取れなくて…」

俺は、次の現場へ行く移動中の時間を利用して北大路さんに会った。

北「ああ!勿論構わんよ。30分も掛からない話だ。 単刀直入に言うが、 君たち2人でCMソングを歌ってみないかね?」


北大路さんは俺達の顔を見詰めて言って来た。


k「CMソング!?」

j「俺と和也で?!」

その、余りにも思いがけない話に俺も仁も面食らった!

北「そうだ。CMソング。やるかね?」

k「・・え、・・や、・・・やるかね?って・・・」

j「・・・聞かれても・・・・なぁ・・?」

北「なんだ?やりたくないのかね?」

k「いえ、そうでは無くて・・・事務所が・・・」


林「ほらね、やっぱりムリなんですよ、北王子さん!事務所を通さずにそんな話するなんて・・・彼らも困ってるじゃないですか?!」


俺と仁が北王子さんからのいきなりのオファーに困り切っていたら、北王子さんの隣にいた男の人が助け舟を出してくれた。


林「もうーし遅れました!わたくし『林』と申します。北王子の秘書をしております。」


林さんという人は深深とお辞儀をして、俺達に挨拶してくれた。


北「事務所なんて関係無い。これはビジネスじゃないんだからな、俺が友人として頼んでるんだ。」

北王子さんはそう言って座っていた一人掛けのソファーに大股を広げて座り直した。


k「友人・・・として、ですか?」
北「そうだ。亀梨君、この間スタジオで一人だったと言ったが、本当は隣の赤西君も居たんだろ?」
k「・・・あ・・あの、それは・・・」
北「何も嘘をつかなくてもいい。 私はこの耳で聞いたんだからな、2人の歌声を。あれは間違い無く君と赤西君の声だった。」

北王子さんは俺を厳しい目で見詰めてキッパリと言い切った。

こうも頑として言われては嘘は着けない。

俺は、仁と居たコトを認めた。


k「・・・はい。嘘をついてすみませんでした・・・。赤西と居ました。」

北「うん。 それでいい。 そこでだ、君達の歌声を聞いて是非私の企画に乗って欲しくてね、声を掛けたんだ」

北王子さんはそう言うとニヤリと笑い身を乗り出して言った。


北「どうかね?CMソング、やるかね?」
k「そう言われましても・・・今ここで返事するのは・・・、一度考えさせて頂いて・・・」
北「一度考えては無しだ! 今、此処で返事してくれ、やるのか?やらないのか?」


そう言う北王子さんは、異様なまでの気迫で、俺はたじろいでしまった。


j「やります!」

k「じん!?」


俺が北王子さんに押されてる間に隣に居た仁が答えた。


北「そうか!やるか!(笑)」

k「ちょッ! 待てよ! お前、何言ってンだよ?!」

仁の返事に満足そうに頷いている北王子さんとは真逆に俺は信じられない気持ちで仁に怒鳴った。

j「やるか、やらないかって聞かれたから『やる』って答えた。 お前はやりたくないのか?」
k「ちがッ・・!そうじゃなくて・・・ッ!そんな勝手なコトしたら、お前今度こそ本当に事務所に・・・!」

俺は仁に話しながらハッ!とした。

俺を見る仁の目は、決意の目でもう何を言っても聞かないコトはすぐにわかった。


北「 亀梨君はどうするね? やるかね?それとも・・・」

北王子さんに聞かれて一瞬躊躇したけど、仁の決意が変わらないのは火を見るよりも明らかだったから俺も心を決めた。


k「・・・やります。 やりますけど、条件があります!絶対俺達だってわからないようにして下さい!」

俺は一か八かで言ってみた。

北「元より、君らの顔や名前は出さないつもりだ。 CMを流すのもラジオだしな、」


k・j「「ラジオ?」」

俺も仁も思わずステレオしてしまった。

北「そう、ラジオ。 ラジオで一日限定で流すCMだ。流すラジオ局は俺が決める。曲も用意するから安心していいぞ、」


北王子さんの話を最後まで聞いて俺は一つ、腑に落ちないコトがあった。

k「北王子さん、ラジオ局は今から決めるんですか?CMの内容は?何のCMですか?」

北「それも、これから決める。 要は君達2人が歌うかどうかが最優先だったんだ、」

j「ソレッて、・・・どういう意味?」

北「あははっはは!君たちの歌声に惚れ込んだって事だよ(笑)君達の歌をみんなに聞かせたいんだ、」

北王子さんは豪快に笑いながら言った。

俺はその理由に呆気に取られてたけど、仁は違った様だった。


j「だったら!」

北「うん?」

j「だったら・・・曲も、俺に作らせて頂けませんか?」

k「仁・・・」

北「・・・ほう。 曲も自分で作りたいと?君がかね?」

j「はい。」

仁は真っすぐ、北王子さんを見詰めて言った。

北王子さんは顎を撫でながらしばらく考えていた様だった。


北「良かろう。 作ってみたまえ。 期限は一週間!それで私を納得させるものが出来なければ曲はこちらで用意したモノを使わせて貰う、 それで良いかね?」


k「一週間・・・」

j「わかりました。一週間後に俺が作った曲をお見せします。」


仁はそう言って、北王子さんと連絡先の交換をした。


北「では、話はこれで終わりだ! 何かわからないコトや聞きたいコトがあればいつでも連絡してくれ!」


北王子さんはそう言うと勢いよく立ち上がり、帰り際に仁に言った。


北「君がどんな曲を作って来るか楽しみにしているよ(笑)」



俺達は深深とお辞儀をして、北王子さんと、秘書の林さんは立ち去って行った。





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k「仁・・一週間て、短くない?本当に一週間で曲作れるの?」


俺は次の現場へ向かう車の中で運転する仁に聞いた。

j「まぁー、長くはねーな、」
k「そんな気楽な言い方・・・本当に大丈夫なのかな・・・」


俺は、仁の曲が一週間で出来るか、どうかも心配だったけど、それ以上に、本当に事務所に内緒で承諾してしまって良かったのか・・・もし、バレたら、それこそ仁は解雇になるンじゃないのか。その事で頭がいっぱいだった。


j「かず、お前が何を心配してるのかはわかるよ。でも、今は『バレたらどうしよう?』より、『どんな素敵な歌が出来るンだろう♪』って、考えてみろよ(笑) その方が数倍楽しいぜッ♪」


仁はそう言って笑って俺を見た。

俺はそんな仁を見て呆れながらも妙に心が落ち着くトコロもあって、仁の、このポジティブシェンキングなトコロは本当に唯一俺が真似出来ないと思うトコロだった。


そんな訳で、今日から怒涛の一週間が始まったのであった。
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