仁亀百色玉手箱〃

□仁亀夢物語
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【仁亀夢物語A】-今宵あなたと-




和也には黙って北海道入りしてた俺の携帯に、中丸から電話が入った。


j「和也が倒れた?!」

N「いや、倒れた訳じゃぁ・・・・」



プツン-ッ!



俺は中丸の話も途中で聞くのを止めて、携帯を切ると和也達の泊るホテルへとタクシーを飛ばした。


和也の部屋は中丸から聞いていたから、目的の部屋まで来てノックした。




トントン・・・





応答が無いー




j『あ、倒れたって言うなら本人出れねーか、』


俺はホテルの部屋の前で「うーん」と考えた。


j『もっかい中丸に電話してみよ、』


俺が中丸に電話すると、数回コールしたのち中丸が出た。


N「お前なぁ〜・・・」

j「今、和也の部屋の前なンだけど、返事ねーンだけど、鍵開かない?」

N「・・・・・」


中丸から返事がないままガチャリと部屋のドアが開いた。


中から顔を出したのは中丸で、携帯電話を片手に迷惑そうな顔をして俺を睨んだ。



N「入れよ、 亀なら寝てるけど・・・」

j「あ・・・わりぃ・・・」



中丸に軽く頭を下げながら俺は部屋の中へと入った。


奥へ進むと、ベッドの中に身体を丸めるように寝ている和也が居て、スゥスゥと、穏やかな寝息を立てていた。



N「お前も知ってると思うけど、亀、このトコロすげー過密スケジュールでさぁ〜・・・俺らから見てもかなり疲れてンな、って思ったんだよ。 したら、案の定、コンサート終わってから貧血起こしてさ・・・」



俺が和也の顔を覗き込んでいる間、後ろで中丸が話してくれた。



j「そっか・・・こいつ、やっぱりムリしてたンだな・・・」



俺は、寝ている和也の布団を直してやりながら言った。


メイサと離婚した俺は和也が長野『魂』へ向かう前日、和也の家へ転がり込んだ。



長野から帰って来た和也はその後も日米野球中継やら、某TV局への連続生出演で、とてもじゃないけど、一緒に過ごせる時間などまるで無くて・・・、


なら、いっそのコト、和也の帰りを待つのは止めて、俺の方から和也の居る北海道へ向かおうと、和也には内緒で現地入りしていたのだった。




k「・・・ン・・、」

j「かず、起きたのか?」

k「・・ぇ?・・・じん・・?」


眠りから目覚めた和也は俺が居たコトにかなり驚いた様子だった。


k「え・・・?なンで?・・・」

j「あー、イイから寝てろって、 お前貧血起こしたンだってな? ちゃんと食ってンのか? ・・・まさか、前みたいに食わないで居たンじゃぁ〜・・・・」


N「 んんッ!ゴホンゴホン-ッ! 赤西、目ぇ醒めたばっかの亀に詰問するなよ? まだ頭ぼーっとしてるンだから、」


中丸が「どけよ」と言わんばかりに、俺と和也の間に入って来て言った。


こういう時の中丸には逆らえない。 つか、逆らわないようにしている。

なンてったってこういう時の中丸は和也の保護者だかンな、

下手に逆らうと、長々と説教かまされて後がめんどくさい。


俺は両手を胸のトコロで上げて「はいはい」と後ろへ下がった。



N「亀、大丈夫か? 気分悪いとか無いか?」

k「ん。大丈夫だよ・・・心配かけて・・ごめんね・・・」

N「気にすンな、(笑) 大丈夫なら良いんだ。 俺、部屋戻るけど、何かあったらココに居る赤西おじさんに頼めよ?こき使ってイイから(笑)」

j「こらこら、誰がおじさんだ? 中丸、お前口悪くなったなぁ〜、」


中丸は「フフン」と、鼻で笑って少し俺達と話した後自分の部屋へと帰って行った。



俺は中丸を見送った後、和也の元へ戻りベッドに腰掛けた。


k「仁、何時からここに居たの?」


俺が座ると直ぐに和也が聞いて来た。


j「 ついさっきだよ、 中丸から電話貰ってお前が倒れたって聞いて飛んで来た、」

k「そうじゃなくて。 何時から北海道に来てたの?」


和也は布団から上体を起こして俺の方へにじり寄って来た。



j「あー・・ん、・・・ お前が北海道入りして直ぐだよ。 お前居ないのに家に居てもつまンねーし、だったら、俺の方からお前ントコ行こうかと思って・・・・ごめん、迷惑だったか?」


俺は和也の都合も聞かずに勝手に和也の後を追って来たコトが、今になって「実は悪いコトをしたのかな?」と、思って被っていた帽子を脱ぎながら謝った。


本当は悪いコトしたなんて思ってないけどさ。


j「和也?」


和也を見ると、布団に突っ伏す様に顔を埋めていたから慌てた。


j「どうした? 具合、悪いのか?」

j「おわッ!?」


和也の肩に手をかけて話しかけた俺に、和也がいきなり抱き着いて来たから驚いた!


俺に抱き着いて来た和也の身体は以前よりほっそりしたかの様に思えるほど軽くて・・・

熱でもあるのか、少し熱い気がした。



k「違うよ・・・嬉しかったんだ・・・俺、仁に会いたかったから・・・」


俺の胸が温かく濡れるのを感じて俺は何も言わないまま和也をそのままギュっと抱き締めた。


俺は和也を抱き締めながらそっと、髪を撫でた。


和也が顔を上げて初めてキスした。



和也は真面目で頑張り屋だから、受けた仕事は全て完璧にこなそうとする。


最近の過密スケジュールだって、きっといつもと変わらず手を抜くなンてコトもせずやり続けていたんだろう。

本当に、周りにいる誰かが気付いてやらないと飯も満足に食わないから心配になる。



j「そうだ、和也、腹減ってね? 俺、なんか作るわ!」

k「え?作るって・・・どうやって?」

j「まぁー待ってろって、」


俺はそう和也に言って一度ホテルを出た。




さっきホテルに来る途中で見かけたコンビニに行き、ご飯に味噌汁、玉子を買ってご飯だけ温めてもらった。


買ったモノを持ってホテルに戻り、無理を承知でホテルの厨房を借りれないか、聞いてみた。


j「具合の悪い友人にお粥を作ってやりたい」と、言って泣き付いてみた。

(本当は作るのお粥じゃないけど、ま、ソコはいいとして・・・)



ホテルの支配人は寛容な人物で、俺の申し出を快く聞き入れてくれた。


俺は厨房を借りて、鍋に温めたご飯と前もって作っておいた即席味噌汁を入れてグツグツ煮た。



j「本当は味噌汁も手作りの方がいいんだけど・・・ま、今日のトコロは仕方ないか、」


頃合を見て玉子を落として出来上がり。


俺は出来上がったおじやをお盆に乗せて和也の部屋へ戻った。



部屋では和也が窓の外を背伸びしながら右に左に見ている姿があった。



k「あ!仁 何処行ってたンだよ?携帯も出ないし、俺心配して・・・」


俺が戻って来たコトに気付いた和也が小走りに駆け寄って来た。



j「コレ、作ってた♪ 」


俺は和也をもう一度ベッドへ座らせて、作って来たおじやをお盆のまま和也に渡した。


k「わぁー、おじやだ!美味そう〜♪ 仁が作ったの?」

j「うん、ホテルの支配人に頼んで厨房借りた、 ほら、冷めないうちに食べろよ、」


俺は和也におじやをよそってやり、食べるように促した。



k「ぅん♪ 美味い! なンか、懐かしい味(笑)」

j「だろ?昔、お前が食えない時もよく作ったもンな、(笑)」


和也は笑いながら俺の作ったおじやを全部食べ切った。


k「ごちそうさま♪ 身体あったまったよ♪」

j「食べたら寝ないとな、ほら、布団入って、」


両手を合わせて「ごちそうさま」と律儀に挨拶する和也を急かすように言った。


k「じん、帰っちゃうの・・・?」

j「え?帰らねーよ(笑) てか、帰すなよ(笑)せっかく来たのに、」


不安そうに言う和也に俺は笑い飛ばして言った。



j「いいから寝ろよ、 ずっと側に居るから・・・」


俺はそう和也に言って、和也のおでこにキスをした。


k「ぅん・・・じん・・」


和也が手を出して来たから、その手をぎゅっと握ってやった。



k「ありがとう・・・おやすみ・・・」


和也は穏やかに微笑んでそう言うと間もなく深い眠りについた。


j「おやすみ・・・和也・・・、」


俺は握っていた和也の手にキスをして言った。


どう? 俺にしては大人しいだろ?(笑)


 また和也が元気になったらいっぱい愛してやるつもりだけど、今日のトコロはね、



このまま和也の寝顔を見て満足するコトにする。





【仁亀夢物語A】-今宵あなたと-

 お※し※ま※い




2012年03月31日執筆ー
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