10Ks!

□◆ A secret ◆
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雄「すみません、遅くなって、」
「遅ーい!待ちくたびれちゃったぁ〜っ゛」

予約した部屋に入ると、広縁にいたエリカ様が真っ白なワンピース姿で駆け寄って来た。

雄「すみません、雨が降ったせいか道が思ってたより混んでて…」

俺は荷物を下ろしてエリカ様に謝った。

「しょうがないなぁー、ねぇ、ソレより見てっ゛この部屋メッチャ景色イイからっ゛♬」
雄「おとと…っ゛」

エリカ様は俺の腕を両手で掴むと足早にベランダに連れて行った。

雄「おおっ!本当だぁーっ゛」

エリカ様の言う通り、見渡す限り美しい新緑の宝庫でー、
小雨が降った後だからか、濡れた緑が風に揺れる様はキラキラと輝いて見えて本当に綺麗だった。

雄「綺麗だなぁ〜っ゛風が気持ちイイーっ゛」

俺は全身に木々からのパワーを浴びるように両手を広げてスゥーっと深呼吸をした。

雄「ココに来れただけでも最高だなぁ〜…」
「だよね〜っ゛東京とは空気が違うモンっ゛空気が甘い❤」
雄「空気が甘い?その例え面白いなぁーっ゛(笑)」

俺は横で目を閉じ俺と同じように深呼吸をしているエリカ様を見て笑った。

「鳥の声も聞こえるんだよね」
雄「ああ、カッコーだね。野鳥も多いんだろうな、」
「中丸くん鳥詳しいの?」

俺が景色を見ながらベランダにもたれかかって言うと、エリカ様はパチっと大きな瞳を開いて聞いてきた。

雄「詳しいって程じゃないけど…バードウォッチングも好きだからたまにやりますよ、」
「へぇ〜っ゛そうなんだ!今度連れてってよっ゛」
雄「連れてくって言っても…朝早いですよ?起きれます?」
「失礼ね!起きれるわよっ゛ドラマの撮影なんか朝イチ撮りもあるんだからっ゛中丸くんこそ、深夜帯のドラマなんて真夜中ばっかの撮影でしょう?」
雄「はぁ?まさか!生放送じゃあるまいしっ゛w いくら放送時間が深夜でも撮影時間まで真夜中のはず無いでしょう?昼間のシーンだってあるに…。いや、むしろ、昼間の撮影時間帯のが長いっす!」

俺はエリカ様が有り得ないコトを言い出したのでムキになって否定したけど、どうやらエリカ様はワザとボケたコトを言って俺から敬語をなくすつもりだったらしい。

「あははっ゛(笑)やっと敬語じゃなくなった!いい加減敬語辞めてよねっ゛あたしの方が年下なんだから、」
雄「ハァ…じゃあ、タメ口で」
「うん、そうして、」

俺はそう言われて暫く考え込んだ。

雄「あの〜…」
「何?」
雄「呼び方、なんて呼べばイイですか?」
「また敬語だしっ゛w呼び方?別に何でもイイよ。エリカで」
雄「いや!呼び捨ては流石にマズいでしょう!」

俺はとんでもないと首を横に振った。

「中丸くんは何でもマズいんだねぇ〜っ゛w別に2人きりの時くらいイイじゃない、」
雄「いやいや、呼び捨てはやっぱり無理だっ゛w」
「じゃあ、好きに呼んで。エリカちゃんとか、エリちゃんとか、…本名で呼んでもイイよ?」
雄「本名はなんて言うんですか?」

俺はちょっと興味が湧いて聞いた。

「澤尻エリカ」
雄「一緒じゃないですかっ゛w」
「あははっ゛引っかかったぁ〜っ゛❤」
雄「なんだよぉ、俺、沢尻桃代とかかと思ったぁーっ゛」
「沢尻桃代?なにソレ?ダサい名前っ゛」
雄「いやぁー、なんか、エリカ様って桃っぽいじゃないですか?だから。桃美とか、」
「ますます有り得ない!…つからエリカ様はやめてね!マジ怒るよっ゛」

エリカ様はまたヤンキー顔になって凄んだ。

雄「怖ぇ〜…わかりました。エリカ様は辞めます。けど、呼び方は沢尻さんて呼ばせて下さい。いきなりエリカちゃんとも呼べないんで、」
「仕方ないわねぇ〜…じゃあ、今は沢尻さんでイイわよ。その代わり他の会話は敬語無しね!」

そんな感じに2人の間に簡単なルールが出来てきてー、
ソレからは、俺たちもだいぶ打ち解けて来て♬ワイのワイの♬ベランダで美しい景色を眺めながら沢尻さんが持ち込んだ白ワインを飲み宿で注文したチーズとサラミをツマミに楽しく会話を弾ませた。



「ねぇ〜、下に降りてみない?川、気持ち良さそうじゃない?」
雄「川?…ああ、確かに。降りてみようか、」

その頃の俺はすっかりタメ語になっていて軽く酔いが回ってすこぶるイイ気分で沢尻さんをエスコートして階段を降りて下の河原へと歩いて行った。

「足、入れてみちゃお…きゃ!冷たいっ゛」
雄「だろうなっ゛wまだ5月だよ?水に入るには早いだろう?」

履いていたサンダルを脱いで素足になってワンピースの裾を持ち上げ川に入った沢尻さんに笑いながら言った。

「でも、水、メッチャ綺麗だよぉ、思わず入りたくなるじゃないっ゛」
雄「まぁー、気持ちわかるけど…沢尻さんて、意外と野生児なんですね?…うわっ!」

俺が言い終わらないうちにバシャ!っと顔に冷たい水を掛けられた!

「また敬語使った!バツね!」
雄「プはっ!…だからって顔にかけるコト無いじゃないですかっ゛…うわ!冷たっ!またぁ?」
「敬語使い続ける限り顔に水かけるわよっ!なんたって野生児ですからねっ゛」

沢尻さんは本当に俺が敬語を使うがための罰なのか、
ソレとも野生児と言われたコトが頭にきたのか、わからないけど、
捲り上げたワンピースの裾をパンツに入れ込んでしゃがみこんでは両手で掬った川の水を俺に掛け続けるという暴挙に出たから俺は堪らず逃げ回った!

雄「わかった!わかった!やめろ!鼻に入る…っ!」
「じゃあ、エリカって呼んで!呼んだらやめてあげるっ!」
雄「わかった!エリカ!やめろっ!」

俺は全身ほぼびしょ濡れ
ネイビーのニットセーターも中に着ていた薄いブルーのシャツからも水が滴った。

雄「ああ〜っ゛もう、全身ズブ濡れだよ!」
「あははっ゛ごめん!ごめん!ヤリ過ぎたっ゛」

そう言って笑う沢尻さんもワンピースがズブ濡れで、中に着ているキャミソールが薄ら透けて見えて…っ゛

俺は目のやり場に困った。

雄「そのまんまじゃ風邪ひくぞ!」

俺はなるべく沢尻さんを見ないように予め持って着ていたベージュの春コートを肩から掛けてやった。

「ありがとう❤中丸くんは優しいねっ゛❤」

そう言ってニコニコと笑う沢尻さんの前髪を上げて出したおでこにも水飛沫が飛んでいて、産毛に光の粒がキラキラと光って笑顔がとっても可愛く見えた。
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