10Ks!

□ぴぃの憂鬱
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智「随分、俺と態度が違うんだなぁー、」

俺は帰りの移動車の中でいつものように後部座席から運転席のチーフマネに向かって話した。

「何のコトだ?」
智「とぼけちゃって…亀のコトだよ。担当でも無いのに、体気遣っちゃってさ、俺への扱いと違い過ぎない?」

俺は正直面白くなかった。
普段は口に出さない不満も一度口火を切れば留まるコト無く溢れて出た。

智「そりゃあ、亀は普段から真面目だし仕事には真摯に向き合うし頑張り屋さんだよ?ソレは俺も認める。…だけど、担当じゃないんだぜ?俺を待たせてまで長話する必要あるの?」
「そんなに待たせたか?ソレは悪かったな。今日はもう仕事が無いからゆっくりしてしまったな、」

俺はその返事にもムッとした!

智「仕事が無くて悪かったな!…すみませんね!稼げないタレントで!」

俺は自分でも「何故だ?」と思うほど、拗ねていて自分でも引くほど我儘な態度を取っていた。

(変だな…何でかこの人の前だと言いたい放題の我儘野郎になっちまう。なんでだろう…?)

俺が自分の気持ちに困惑していると、チーフマネは車を路肩に止めて後ろを見た。

「誰がそんなコトを言った。稼げないタレントだなんて…そんなコト言うもんじゃない。」
智「だって…!事実だろ?ドラマに出れば視聴率は悪いし、ライブもイマイチ…事務所が思う程の成果を俺は出してないんだろ?」

俺はずっと思ってた。
『俺も仁みたいに独立しようか…』と。

けど、ソレは叶わずやりたいコトは尽く反対され、やっとIマネになってから中国を始めアジア各地にツアーに行ける様になり、ゆくゆくはフランス進出も考えていた矢先にIマネは退社ー、

上のゴタゴタに巻き込まれて俺の海外進出も中途半端に終わった。
Iマネの退社で仕事が減ったのは俺だけじゃない。
もっと深刻なタレントだっている。…ソレはわかっているけど、順風満帆なタレントを見るとつい、羨ましくなってしまう。

(こんな自分は大嫌いだ!)

言っても仕方ないコトを愚痴る自分に嫌悪感を抱きながら尚も不満は止まらず不平不満をブチまけ続け、終いには「Iマネが居たら…」
と、尚更言っても仕方の無いコトを言ってしまった!

「Iさんが居ても現状は変わらなかったかも知れないぞ、所詮は自分の問題だ。」
智「ソレ、どういう意味?俺にはどうせ仕事が来なかったって言いたいの?」
「そうじゃない。そんなコトは言って無い。お前の気持ちの問題だ。」
智「気持ちの問題?…ああ、どうせ俺は問題児だからね!亀みたいに事務所の言いつけ守る優等生じゃ無いからな!…イイよな、守られてる奴は…」
「山下!」

俺は普段口数の少ない物静かなチーフマネが聞いたコトも無い大声を出したからビックリした!

智「な…っ!なんだよっ!?いきなり叫んだりして…っ!」

俺は体を斜に向けてどもりながら聞いた!

「お前、本当に亀梨を守られてると思ってるのか?」
智「…っ!」

俺はそう聞かれて咄嗟に言葉が出なかった。

「亀梨だけじゃない、亀梨を含めたKAT-TUNのメンバーが今、どんな状態か、お前が一番知ってるだろう…?」
智「…ぅっ」

(確かに知っている。否応無く充電期間に入った亀を始め、中丸、上田の気持ちを…)

「直接の繋がりが無いにしろ、同じ事務所の仲間だ。彼らの状況を見れば決して『守られてる』なんて、言えないはずだぞ。」

俺はそう言われてグウの音も出なかった。

智「わかってる…俺が言い過ぎた。ごめん、悪かった。」

俺は下を向いたまま小さな声で謝った。

智「ちょっと拗ねただけだよ。…アンタがあんまり亀に構うから…ガキみたいだよな、ホント。情けねぇ〜っ゛w」

俺は居心地が悪く苦笑いした。

すると、チーフマネは今までとは打って変わって優しい穏やかな口調になった。

「気にするな。…誰にだって八つ当たりしたい時があるさ。俺も悪かったな、寂しい思いさせて、」
智「バっ!バッカじゃないのっ!?気色悪りぃ!誰が寂しい思いなんてするかよっ゛」

俺は思いも寄らず普段鉄仮面のチーフマネに言われた謝罪の言葉に耳まで赤くなって怒鳴り散らしたっ!〃

「そうか?なら、イイ。…亀梨のコトだが、最近まで番組の企画で体鍛えてただろう?」
智「ああ、120`出す豪速球プロジェクトね、よくやったよな、」

チーフマネは車を走らせ始め、俺も見ていた亀の投球シーンを思い出していた。グアムで挑んだ120`出すプロジェクトは惜しくも105`で終わってしまった。
その瞬間の亀の唇を噛む悔しそうな顔は忘れられない。

「目標を達成出来なかったプロジェクトは強制終了、亀梨は精神的にも肉体的にもギリギリまで頑張っていた。その後は、次の仕事の為に増やした体重を落として元の体型に戻すのにかなり努力したはずだ。」
智「だろうね。体重の増減の大変さなら、俺もわかる。映画で経験したから…」
「『明日のジョー』だな。お前もストイックな部分はあるから、亀梨の気持ちもわかるだろう。
俺が亀梨の体調を気にしたのはその為だ。」
智「なるほどね、」

(まぁー、そういうコトにしておくか、)

と、思わせるほど、チーフマネはそのまま聞いてもいないコトまで話しだし(ほとんど亀梨とKAT-TUNの話。)俺は半ば呆れた状態で自宅マンションに着くまで聞かされた。
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