少女漫画みたいなお話。

□K9
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俺の名前は中丸雄一。
年齢 32歳。
妻、恋人、女友達、無し。
花の独身貴族と言いたいトコロだか、とても花とは言えない独身男だ。

時代は20xx年ー、

TOKYOオリンピックが開催されてから50年以上の月日が流れた。

その50年の間に色々なコトが起こり、俺は今現在とある郊外にある研究所に勤務している。
研究所は都心にほど近いのに辺りは深い森に囲まれた静かな場所で研究にはもってこいの環境だ。

元々は遺伝子学を専攻していたけど、今は人口知能の研究に没頭している。

そんな俺は、今日も今日とて、代わり映えのしない1日の始まりを迎えて研究所に足を運ぶ。


雄「おはよう、K9」

俺は研究室に入ると真正面にあるガラスケースに囲まれた『K9』に挨拶をする。

『K9』はすっぽりと布団を被りまだ眠っていて起きる様子は無い。

雄「やれやれ、定時に起きるコトも出来ないか。…コレじゃあ家事ロボットとしても使えないな、」

俺は溜息を吐いた。

俺がこの研究所に来て人口知能の研究を始めて9体目のロボット。
ソレがこの『K9』だ。

雄「ハァ〜…2週間後には東堂教授の前で研究発表があるのに…このままじゃクビだよ↓↓↓」
増「おはよ!なに、朝から暗い顔してんだよっ゛」

そう快活な様子で声をかけて来たのは同期の増田。分野は違うが彼もこの研究所の職員だ。

雄「おはよ、相変わらず元気だな。『K9』だよ、全く俺の言うコトを聞いてくれなくてさ、」

俺は朝通勤途中で買って来たクロワッサンを一つ袋から出して口に運んで、また溜息を吐いた。

増「そうかぁ〜…相変わらず朝も起きねぇ〜んだな、低血圧か?」
雄「増田、『K9』はロボットだぞ?…低血圧なんてあるかよ、」
増「冗談だよ、冗談っ゛お前があんまりにも落ち込んでるからさっ゛元気づけたんだよっ゛」
雄「何が元気づけただよ、そんなコトくらいで元気になるワケ…」
増「あ、起きた。」

俺達が喋っていたら、寝ていた『K9』がモゾモゾと布団の中で動き出して顔を出した。

「ふああ〜ぁ、」と、大きなアクビをして両腕を高く伸ばす『K9』はむにゃむにゃと目を擦りまだ眠そうだ。

増「相変わらず裸で寝てんだな。パジャマは着せないのか?」
雄「着せてるよ。…けど、嫌みたいですぐ脱いじゃうんだ、」
増「ロボットの癖に裸族か?せめて、東堂教授の発表会の時は服着せろよ?w」

そう言って笑って出て行く増田に「わかってる」と、答えた俺だけど、(ソレが出来たら苦労しねぇ〜よ!)と、心の中では舌打ちしていた。

雄「『K9』、なんで、服を着ないんだ?昨夜もパジャマ着せてやっただろう?」

俺が話しかけても『K9』は見向きもしない。ソレどころか、俺が着せてやったパジャマはいつの間にか『K9』にやった犬のぬいぐるみが着ている始末だった。

雄「コレ、お前が着せたのか?犬は毛皮があるから服は着なくてもイイんだよ。この間DVDでも見せただろう?」

俺が犬のDVDを手に持ち話しかけると、やっと『K9』が反応を示した。

雄「犬のDVD見たいのか?見たかった頷いて、」

俺が言うと、「うん、うん、」と、頷く『K9』。
言っている言葉の意味はわかるのだ。なのに、発語が出ない。

(声帯の作りはおかしくないはずなんだけどなぁ〜…なんで、言葉を話さないんだろう?)

『K9』については、本当にわからないコトだらけでー、

何がどうしてこうなったのか?
皆目検討がつかないコトに俺は悩んでいた。

雄「犬が好きなコトはわかる。他にも沢山色々な動物のDVDを見せたけど、犬が1番反応が良い。」

俺は独り言をブツブツ言いながら、ガラスケース越しに楽しそうに犬のDVDを見ている『K9』を見詰めた。

雄「見かけはイイんだけどなぁ〜…白い肌に漆黒の髪。小さな顔に目は大きくて睫毛も長い。唇だって愛され顔定番のアヒル口なのに…」

と、ルックスは完璧なのに内容が伴わない『K9』をどう教育して行けばイイのか…

俺は本当に悩み込んでしまった。
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