union

□トラベルToLOVEる❤
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10月✕日。

秋風が気持ちイイ

雄「あーっW久しぶりだなぁーこんなにゆっくり出来るの」


ライブの合間を縫っての『シューイチ』のハワイロケも無事終えて数日。その後も『家事野郎』のロケに番組収録、ドル誌に掲載中のイラストの作成…などなど…

雄「そうそう、その前にタメ旅のロケもあったんだよなぁー、」

宮城でのライブ直後に『タメ旅』沖縄ロケもあったコトを思い出してこのところの目まぐるしい日常を振り返りながらベランダの手摺に身体を預けてビールを飲んだ。

雄「けど、こういう忙しさ嫌いじゃないんだよな。アイドルらしくてさ、」

頭の中に2年間の充電期間が思い浮かんで、その頃はライブがやりたくてもやれない状況で辛かったコト、『シューイチ』でも他のグルーブ(ジャニーズ)のライブ映像を見ては羨ましく思っていたコトを思い出して唇を噛んだ。

雄「ソレが、今はこうしてファンのみんなの前に立てるんだもんな。有難いよな…みんな温かくって。あの笑顔が見れるなら寝る間も無いくらい忙しいのなんか苦じゃないな、」

俺はそう独り言を呟いて持っていた缶ビールを飲み干した。


雄「…和也、どうしてるかな、」

お互い忙しくてプライベートでは全く逢えず、ライブや『タメ旅』のロケで顔を合わせてもロクに話も出来ないでいた。

雄「アイツの方が忙しいもんなぁ…、横アリの後アメリカ行ってしかも8日間。帰って来たら直ぐに仙台ライブだしその後東京戻ってGoingだろ?マジハンパねぇーわ、」

俺は仙台で見た和也の疲れた顔を思い出しポケットからスマホを取り出した。

雄「電話してみるかな…」

時間は遅かったけど、しばらく聞いていない和也の声が聞きたくて電話した。

《turu…tururu…tururu……》

雄「出ねぇ〜なぁ、風呂にでも入ってるのかな?」

何度かコールしたけど和也は出るコトが無かったので、そのまま留守番電話に変わる前に電話を切った。

雄「クシュ!…ちょっと寒くなって来たな。中に入るか、」

日中はまだ暑いとはいえ、やっぱり10月だ。夜更けになるにつれ冷え込んで来たので俺は部屋の中へと入った。




丁度その頃ー、
同じ爽やかな秋風が吹く東京の空の下俺、亀梨和也は久しぶりの長風呂を満喫して真新しいバスローブを羽織り鼻歌混じりに冷蔵庫からよく冷えた水素水のペットボトルを取り出してリビングのソファーへと身を投げ出した。


和「はぁーっW身体伸ばせるのって幸せぇ〜っW❤」

ソファーの上で両手両足をうーんと、存分に伸ばして両足首を上下させたり足の指をグッパグッパしたりして軽くストレッチした。

和「ココんトコロ移動ばっかでゆっくり足も伸ばせなかったから動かせるのが気持ちイイやぁー❤足、浮腫んでるなぁ…ボールボールと、」

俺はふくらはぎや足首に浮腫みを感じてゴルフボールくらいの球体が2個着いたローラーを取ってコロコロとふくらはぎから足首へと転がした。

和「こういうメンテって大切だよねぇ〜肌荒れも気になるなぁー…」

仕事が忙しいのは嫌じゃないけど、美容に割く時間が減るのは困る。

和「最近急に冷えて来たからかなぁー、夏の疲れも出て来てる感じ。お風呂でマッサージはしたけどパックもしようかな…」

どうも遊花を産んでから冷え性が悪化した感じで、季節の変わり目辺りから足の爪先が冷たくなるようになった。

和「出産でホルモンバランスが崩れたのかもしれないな、、、」

俺はそんなコトを言いながら保湿重視のパックもして渡米中に録り溜めたテレビ番組に目を通し始めた。

和「あ、日テレ特番!雄一出たんだよな、」

早送りしながら雄一を探そうとした俺はかなり最初の方で止めた!

和「えっ?なにコレ」

俺の目に飛び込んで来たのは、並んだマネキンに着けられた黒いブラジャーを次々と外していく雄一の姿だった!

和「はぁ?何だよ?コレ!ブラホック外しってなに?!こんなの聞いてないよ!!」

思いも寄らない衝撃的なシーンを目撃した俺は、すかさず早送り!
雄一の出ている『しゃべくり企画』まで進めた!

ソコには、前回優勝者の有田さんのアドバイスに反してブラホック外しに持論を称える雄一の姿があった。

雄「有田さんがやり方で人差し指入れてるって仰ってたじゃないですか?1.2.3.て。じゃなくて、1.2.で行きます!」
「1.2.で?」
「イイと思うよ!イイと思うよ!」
雄「多分だいぶ短くなると思います!」


和「なに言ってンだ?コイツ…っW」

テレビの中の雄一は、自信アリ気な顔をしてジャケットのボタンに手をやりヤル気充分に見えた。

「さては君、ブラジャーに詳しいな!」

そんな上田さんのイジリにも「いやいや」と笑顔で緩く否定している雄一っW
いよいよスタートするというのと同時にソファーから落ちるように降りてズザザザザー!っと、前のめりにテレビの前に張り付いた!

「よーい!スタート!」と、始まった雄一のブラホック外しは早い!早い!あっという間に端まで外して一往復、二往復する頃には手を叩いて笑う雄一の顔が見えて更には、マネキンにホックを着けるスタッフさんに追い付いてしまい「早く!早く!」と、足踏みして急かせる姿までが映し出された!

和「はぁー?何コレ!?なんでブラホック外しなんか得意なんだよ!?」

雄一の打ち出した記録は43個。
前回優勝者の有田さんの記録をゆうに追い抜いた形となった。

「コレは新しい風だよ!ブラホック界に新生が現れたよ!!」

興奮気味に話す有田さんに、司会の上田さんまでが

「君のコトはジャニーズのドン・ファンと呼ぼう!!」

なんて言い出してソレに対して満更でもない顔で「ありがとうございますっW」と、答えている雄一に腹が立って仕方が無かった!

和「何がジャニーズのドン・ファンだよ!こんな話聞いて無い!」

俺はイライラしながら立ち上がった!

和「そう言えば…俺がアメリカ行ってる間の雄一のスケジュール聞いた時、マネージャーがいやに話はぐらかせてたな…ソレってこういうコトっ!?」

俺は行きの飛行機の中で隣に座るマネージャーに雄一や上田のスケジュールの話を聞いた時に、いやに雄一の時だけしどろもどろになっていたマネージャーの顔を思い出しながら怒りが増した!

和「俺に話すとまた騒ぐと思って話さなかったんだ!マネめぇ〜っ!…つか、雄一も雄一だ!なんでひとっこともこの話しなかったんだよ!」

ソレはきっとマネージャーと同じく俺に話すと反対されると思ったか、若しくはマネージャーに俺には言うなと口止めされたに違いないと思った!

和「ソレにしても、なんでブラホック外しなんか上手いんだよ!?…俺が着けてるワケじゃ無いのに…っW」

俺は言いながら再びソファーに座り、もうコレ以上は見たくないと特番を止めた。

(なんだかモヤモヤする…
雄一、上田さんが言ってたみたいにブラジャーに詳しいのかな?
けど、なんで…?)

さっきまでのイライラした気持ちにモヤモヤした寂しいようなスッキリしない気持ちのまま俺は『シューイチ』も見た。

(確か、シューイチファミリーでハワイに行くって言ってたな…)

そのコトは事前に雄一からも聞いていたから俺は一呼吸して自分を落ち着かせてじっくり見る気でいた。…けど、落ち着いて見ていられたのもホンのさわりだけ。

片瀬さんの水着姿にまた撃ち抜かれた!

片瀬さんの着ていた水着は青に赤と白のラインが入ったシンプルながらも可愛らしいデザインでミニ丈も片瀬さんのスラリと伸びた長い脚を強調させて似合っていた。
ソレに胸元が控えめな代わりに背中は大きく開いて彼女の華奢な白い肌に沿う2本の肩紐が女性らしさを感じさせてものすごくセクシーだと思った。

和「片瀬さん、やっぱりスタイル良いなぁー……」

素直な気持ちが口から出た。
秀さんも居て『シューイチファミリー』3人でのロケなのに、
なんだか雄一と片瀬さんの距離が近い気がして……

後半は言葉が出なくて無言のままずっと膝小僧を抱えながら見た。


和「はぁー…何だか落ち込むな」

『まじっすか!』を見る前にテレビを消した俺は言いようのない凹んだ気持ちで寝室へとトボトボ歩いた。

和「あ、雄一から電話来てる」

ベッド横のナイトテーブルの上に置きっぱなしだったスマホを見ると雄一からの着信があった。

和「20分前か…まだ起きてるかな…」

そう呟きながらも電話を掛け直す気にはなれなくて……

俺はそのままスマホを置いた。

和「もう寝よう。明日も早いし」

電気を消してベッドに潜り込んだ俺の頭の中は雄一のコトでいっぱい。先に見たブラホック外しの雄一とハワイロケで片瀬さんと笑顔で話していた雄一の顔が頭から離れなくて、いつしかソレは心の奥底に眠る俺の中の劣等感の箱をこじ開ける鍵となった。

和「雄一はやっぱり女の子がイイのかな…普通の…女の子が…」

ソレはもう長い事開けて無かった俺の中の秘密のコンプレックス
雄一と付き合いたてのうちはよく首を擡げていた悩み。
ソレも雄一と結ばれて遊花というかけがえのないもの宝物が生まれて忘れ掛けていた小さな…
ソレでいて決して亡くならない俺のコンプレックス

ソレが久しぶりに俺の心を支配して来て眠らなきゃいけないのに眠れなくなった。

(雄一に直接電話して聞けば簡単に解決するかもしれない問題なのに、…なんでだろう。怖くてできない…)

寝返りを打ってふと、窓を見れば大きく揺れる木の枝の黒い影が目に入った。

(怖い…)

次の瞬間ー、
目には見えない恐怖から身を守るように布団を被って何も考えないようにしようとする俺の耳には秋風に吹かれてザワザワとザワめく木の葉の音だけが響いてー、

そのザワめきはそのまま俺の心の中の音のように聞こえた。
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