10Ks!

□◆ A secret ◆
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雄「困ったな…コレ、どうするか、」

俺は〇テレの廊下を歩きながら、以前特番で貰った『椿〇荘』の宿泊券を眺めながら呟いていた。

雄「2人で行くって言っても、亀はドラマの撮りがあるし、竜也も舞台が始まって忙しいしなぁ〜…」

宿泊券には期限があって、
俺はマッスーや他の友人知人、仲のいい後輩たちなどの顔を思い浮かべては「アイツも忙しい」「コイツもダメだ」と、1人、1人、頭に浮かんだ顔に✕印を付けて溜息吐いた。


雄「仕方ない。父さんと母さんに渡すか。普段なかなか親孝行出来ないしな、」

俺自身行きたかったけど、めぼしい相手が見つからなかったので、
両親へのフルムーン旅行にでもしてもらおうと決めた時だった。

「アレ?椿〇荘の宿泊券じゃない?中丸くん、まだ行ってなかったの?」

そう唐突に話し掛けて来たのは沢尻エリカさん(通称:エリカ様だ)

雄「うわぁ!ビックリした!…沢尻さん、いつから後ろに居たんですかっ!」
「さっきから居たわよ。中丸くんなかなか気づかないから気づくまで後着けてたのっ゛❤」

エリカ様はそう言うと、茶目っ気タップリに大きな瞳に笑みを浮かべて後ろ手にバックを持ち俺の肩越しに『椿〇荘』のチケットを覗き込んできた。

「期限、今月いっぱいじゃない」
雄「そうなんですけど、なかなか一緒に行ける人が居なくて…」
「そうなの?じゃあ私が行こうか?」
雄「ええっ!?冗談でしょ?w」

俺はてっきり彼女が俺をからかってるんだと思い驚きながらも半笑いで聞いた。

「冗談じゃないよ。中丸くんこの日休み?」

エリカ様はサッと鞄からスマホを取り出しスケジュール表を出してとある日にちを指差した。

雄「ああ、その日は空いてますけど…」
「じゃ、決まり!中丸くん予約入れといてねっ゛♫」

エリカ様はそう言って颯爽と立ち去ろうとした。

雄「いやいや、ちょっと待って!ソレはダメでしょう?」

慌てて止める俺!
局の廊下だから、周りに変に思われないよう気を配り背中を丸めてエリカ様に近付いた。

「ダメってどうして?」
雄「どうしてって…っ゛…怪しまれるに決まってるじゃないですか!妙な噂が立ったら嫌でしょう?」
「別に?嫌じゃないけど」
雄「ええ〜〜〜っ゛」
「シーッ!中丸くん声大きい!」
雄「あ!…すみません…」

周りに気をつけなくちゃいけないと言っていた俺が人一倍声がデカくて逆にエリカ様に注意されたっ゛w

「とにかく詳しい話は後でね。連絡先、交換しよう、」
雄「連絡先?」
「そう。LINEしよう、登録して、」
雄「連絡先は…ちょっと…」
「なに?那奈とは連絡先交換してるんでしょ?私とは出来ないって言うの?」

エリカ様は急に凄み出してさっきまでの愛くるしい顔からヤンキー顔になったっ゛

雄「いやっ!そういうワケでは…片瀬さんは番組の共演者なんで…」
「私だって共演者じゃない。元だけど…LINEが嫌ならメールでも携帯のSMSでもイイわよ、」
雄「じゃあ…とりあえずSMSで…番号教えます。」
「うん、教えて」

俺は結局、エリカ様に押し切られた感じで自分の携帯番号を教えた。

「あっ゛キャリア一緒だね❤なんか嬉しい❤じゃ、またね!予約取れたら教えてっ゛❤」

エリカ様はニコニコと笑って言うと、片手を上げて小走りに去って行った。

雄「あーっ゛ついに番号交換しちゃったよっ゛…大丈夫か?俺…」

俺はこの嵐のような出来事を長い髪を揺らして去っていくエリカ様を、ただ、呆然と見詰めながら廊下に立ち尽くした。
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