君の秘密は、僕のモノ
□悪魔で天使
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亀「雄一、エッチしようっ♬」
俺は毎朝この言葉で目覚める。
雄「しない」
そして毎朝同じ返事を返す。
雄「いい加減朝は『おはよう』と言って起こしてくれないかな?…全く、毎朝、毎朝、『雄一、エッチしよう』って…」
俺はベッドの真上に浮かぶ亀に向かってブツブツ文句を言いながら枕元に置いた眼鏡をかける。
申し遅れたが、俺の名前は中丸雄一。
神学生だ。
俺には、5歳前の記憶が無く、物心ついた時にはすでにこの教会に住んでいた。
亀「だって〜『おはよう』なんてかったりーじゃんっ『エッチしようっ♬』の方がファンキーじゃね?」
こんなコトを朝っぱらから言っている奴の名前は『亀』
亀は人間じゃない。
コトもあろうに、悪魔だ。
亀は俺が小さい時から一緒に居る。なんでだか知らないが一緒に居るのだ。
因みに、俺の1番古い記憶の中に居るのも亀だ。
今は亡きこの教会の創始者だったブラウン神父の話だと、俺は血塗れで雨の中教会の前に倒れていたらしい。
程なくして、教会から然程離れて居ない白樺の小径で俺と同じように血塗れで倒れている若い男女を発見。
その2人が乗って居たであろう車の中にあった免許証やら何やらで、倒れていた男女は夫婦だとわかり、俺はその2人の子供だというコトが警察の調べでわかったそうだ。
俺の両親はブラウン神父が見つけた時には既に息絶えていてー
どうやって教会まで辿り着いたのか、俺だけがこうして生き残った。当時の警察の話では、亡くなった両親の体には野犬にでも襲われたような鋭い牙で引き裂かれたような傷痕があったそうだ。
その傷痕は、幼い俺にもあって、
緊急搬送された病院で手当てを受け三日三晩意識が戻らず、
やっと目を覚ました時に見たのが
病院の天井にフワフワと浮かぶ亀だったのだ。
「起きたか!雄一、エッチしようぜっ♬」
三日三晩生死の境を彷徨った俺に対しても確かそう言っていた。
(しかも、俺は当時5歳児だぞ!)
雄「全くっお前の非常識さ加減には恐れ入るよっ」
俺は当時のコトを思い出し洗面所で顔を洗ってから言った。
亀「なんだよ?また昔の話?お前も忘れろよ、そんな昔の話、」
雄「忘れられるかっ俺の僅かな幼少期の記憶だぞ!今は思い出せないけど、いつかどうして俺たち親子がそんな目にあったのか思い出してやるんだからっ」
俺は息巻いて歯磨き粉を飛ばしながら話したけど、亀は頭の後ろで手を組んで「ふあ〜」っと、欠伸をしては片足でもう片方の足を掻いてる始末。
雄「全くっ…!」
と、鼻息も荒く目の前の鏡を見るとそこには居るはずの亀が映ってなくて…
やっぱり亀は人間じゃないんだと改めて確信する。