少女漫画みたいなお話。

□K9
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雄「すみません!遅くなりました!」

俺はロビーで待っていた美月さんに駆け寄った。

「いいえ、大丈夫です(笑)」
雄「行きましょうか?」
「はいっ゛」

美月さんはニッコリと笑って白いバックを前に持って俺の後を着いてきた。

駐車場に着いて俺が運転席に乗り込むと、美月さんは車の周りをウロウロ。

雄「どうしました?」
「あの…どうやって乗れば…」
雄「えっ?」

(まさか、車の乗り方も知らないのか?そこまでのお嬢さまっている??)

「中丸さん?」
雄「あ!ああ、すみません!気が付かなくて…っ!」

俺は心の中で思いながら慌てて車を降りて後部座席のドアを開けた。

雄「どうぞ」
「私…助手席に乗りたいです」
雄「えっ!助手席?…ああ、そうですね。普通〜そうですよねっ゛」

慌てふためく俺の顔を見てポっと顔を赤らめる美月さん。

「ごめんなさい。はしたなかったですか?」
雄「いやいや!そんなコトはありませんよっ゛…俺…いや、僕、女性を助手席に乗せたコトが無くて…」
「そうなんですか?…じゃあ、私が初めてですの?」
雄「そうです」
「嬉しい…っ!感激ですわ!」

美月さんは何にそんなに感動したのか、バックを持った両手を組んで目をウルウルさせていた。

雄「どうぞ」
「ありがとうございます!」

俺は助手席のドアを開けて美月さんを乗せた。

(ヤレヤレ…やっと乗車してくれた。)

俺はココまで来るのにだいぶ時間が掛かったと思いながらハンドルを握った。

雄「御自宅は確か世田谷でしたよね?」
「そうですけど、今は赤坂に向かって下さい」
雄「赤坂?なぜ?」

俺が聞くと、美月さんはモジモジしながら答えた。

「父と夕食の約束をしていて…レストランに予約を入れてるんです。…中丸さん、一緒に食べて頂けませんか?」
雄「えっ?食事も?あ!いやいや!」
「イタリアンの創作料理店ですの!とっても美味しくてなかなか予約も取れないんですのよ!」
雄「そ、そうなんですか…」

俺はサッサと美月さんを家に送り届けて研究室に戻りたいと思っていたからまさか飯まで一緒に食うなんて思わず唖然とした。
それでも、美月さんは目をキラキラさせてすっかり食事に行くモードで、とてもじゃないけど「早く帰りたいんでお断りします」
…なんて言えないムードだ。


雄「わかりました。僭越ながらお誘いお受けします。店の住所か電話番号わかりますか?ナビ入れるんで…」
「はい!…えっと、住所はぁ〜…」

(ハァ〜↓マジか!このまま美月さんと食事か!俺は一刻も早く『k9』のトコロに帰りたいのに!)

俺は今どき店の住所もスマホに入れて無いのか?と、若干イラつきながら美月さんを見た。

しばらくして、やっと目的地の住所がわかり俺は美月さんにシートベルトを締めるように言って車を出した。

店に着くまでの間も、店に着いてからも、とにかく美月さんは喋りっ放し。俺が相槌を打っても打たなくてもお構い無しにしゃべくり続けた。


「すみません。ちょっと、席を外しますね、」

美月さんがそう言って席を立った瞬間!

俺は美月さんが見えなくなるのを確認して研究室に電話した。

雄「もしもし?増田か?」
増「おー!中丸!どうした?なかなか帰って来ないから心配したぞ?」

増田は何やらモグモグ食べながら電話に出た。

雄「すまん、美月さんと食事中だ」
増「食事?2人っきりでか?」
雄「そうだ。いきなり誘われて断れなくてこのザマだ↓」

俺は白いテーブルクロスに隠れるくらい項垂れながら話した。

増「イイじゃねぇ〜か!美月さんと2人っきりで食事!何食った?大方、高級レストランか?」
雄「まぁな。イタリアンの創作料理の店らしいけど、彼女のマシンガントークに圧倒され過ぎて味もよくわかんないよ、」
増「イイなぁーっ゛イタリアン! 俺も一応イタリアンだぜっ゛今、ピザ食ってるっ゛♫」
雄「ピザ、イイじゃないか。…トコロで『k9』はどうしてる?」
増「元気にしてるぜ!一緒にDVD見てる、エラい興味示してるぜ?(笑)」
雄「本当か?何のDVDだ?…英語が聞こえて来るけど…」

俺は「英語のDVDなんて持って行ったかな?」と、思いながら聞いた。

増「昔懐かしいアメリカン青春グラフィティーさ、俺が持って来たっ゛」
雄「ああ?なんだそりゃ!…お前、そんなモン『K9』に見せてんのかっ!?」
「どうかしましたの?」

俺がガタン!と椅子を鳴らして立ち上がったトコロに美月さんが帰って来た!

雄「あ!いえっ、なんでもありません!…ちょっと失礼!」

俺は美月さんから離れ電話口の増田と話した。

雄「俺が置いといたDVD見せろって言っといただろう!なんで、ハリウッド映画なんか見せるんだよ!」
増「そうガミガミ怒るなよぉ〜『k9』だって喜んでるぜぇ、あ、ちょお、待った!良いシーンだ!切るぞ!」
雄「えっ!おい!?増田!」

増田は途中でブツリと電話を切ってしまった。

(良いシーンてなんだよ…何だか嫌な予感がする…っ!)

「大丈夫ですか?中丸さん、お顔の色が優れませんわ、」
雄「美月さん!すみません!至急研究室に戻らなくてはならなくなりました!御自宅までお送りします!」
「えっ?えっ?まだお食事が…っ!中丸さん?」

俺は引き留める美月さんを他所に会計を済ませ(とんでもなく高額でカード払いにした)遅れて店を出て来た美月さんを再び車に乗せとにかく早く研究室に戻りたい俺は急発進した!
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