第一書庫
□星空色の指輪と琥珀のループタイ
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ーーー…ボスの炎と似てる…!
そう思い、手に取った琥珀のループタイのピンを、ボスの誕生日にプレゼントしたのは、昨年の話。
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「あぁ〜もう、何でもない休日サイコー!!」
ボスは両手を空につき出すように、ぐぐっと伸びをした。
ボスは今日、仕事が無い。というのも、丸一日の休みをつくるために昨日までに全て終わらせたらしい。
普段仕事が無い時は、骸様達…守護者の皆が色々なモノを破壊した報告書をボスに整理させて、骸様達やボスの家庭教師がそのそばで、ボスを(罵り合って)取り合っているのだけれど、先日ボスが…
「仕事が全部終わって、一日休暇が取れたら、俺が思った『一番モノを破壊しなかった人』と一緒にデートする」
ーーーという言葉に、それから皆、今日まで仕事以外の事柄で破壊活動をしなかった。
…凄い。
そして、今日のボスの休日デートに選ばれたのは、何と私だった。
ボス曰く、
「幹部達の中で、ムダな(←重要)破壊活動をせず、破壊活動報告書が一枚も無かったから」
と言われた。
…嬉しい。
ーーー…それからもう一つ…嬉しいけどモヤモヤとしたものが、私の心を霧のように覆う。
…その原因は、ボスの格好。
オフホワイトのカッターシャツに黒のベスト、ベストと少し生地の違う黒のスラックス、上着はスラックスと同じ生地のものを羽織っていて、シンプルだけどシックで格好いい、紳士をイメージさせる。
普段、ボスが着ているのは、白色系のスーツだから、いつもと違って新鮮な感じ…。
ーーーここまでの説明では、何の問題も無いのよ?けど…
チラリとボスの首元を見る。
その視線に気付いたボスが、小首を傾げて訊いた。
「クローム、どうかした?もしかして、俺と遊ぶの嫌だった…?」
「ううん…!そんなことない。とても楽しみなの…!」
そう言うと、ボスは「そっか」と言って、照れくさそうに笑った。
私もつられて微笑んだ。
ーーーけど、やっぱり気になった。
ボスの首元を飾っているのは、私が昨年のボスの誕生日にプレゼントしたループタイ。
夕陽色の琥珀に、落ち着いた金の縁取りがされていて、襟下を通った黒の紐を綺麗にまとめていた。
ーーー…やっぱり、ボスの色だ。
夕陽色のそれは、ボスの戦闘時に、ボスの額に揺らめく炎と似た色だった。見ているだけで、暖かい気持ちになる、あの炎に…。
だから、古そうなお店の店先で見つけた時、ボスの誕生日プレゼントにと買って、贈った。
ーーーけど、ボスは今日まで一度も、このループタイをつけなかった。
私がプレゼントした時、とても嬉しそうにしてくれていたから、喜んでくれたと思っていたけど…ボスはやさしい人。だから、気に入らなくても貰ってくれたんだーーーそう思うことにした。
…けど、どうして今日?
「…クローム?」
「…あっ、ごめんなさい」
「大丈夫?考え事していたみたいだけど…」
「ううん。平気よ、ボス」
「そうか…何かあったらムリしないでね?」
「…ありがとう、ボス」
話ながら、私達は街へ下りていった。