進撃ss

□雅な世界
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古典あまり興味ない人はつまらないかもです!!

――――――――――


「兵長」

「あ?」

「古城の地下の収納部屋整理してたら、こんなの出てきました」



そういってエレンが出したのは、重そうな木箱だった


「こいつがどうかしたのか」

「あ、いや…その、中身がどうも捨てがたくて…」

「あ?」


基本、エレンは白黒はっきりする性格で、捨てる捨てないに躊躇はない方だ

そんなエレンが、わざわざ聞いてくるのは珍しい

とにかくリヴァイは、その木箱の中を確認した


「…服、か?」

「はい…しかも柄も質もかなり綺麗で」


出てきたのは、何重にも重ねられた布生地

刺繍も丁寧に施されている

しかしこんな形をした服、エレンは見たことも聞いた事もなかった



「…これ、まさか十二単か?」

「じゅうにひとえ?」


これまたエレンが聞いたこともない名前だ


「この服の名前だ。女房装束姿と言うらしい」

「はぁ…」


昔の民族衣装でしょうか?
と聞けば、リヴァイはそれに頷いた


「書物で見た事がある…女性の官職の者が着る服だ。
下に“白小袖”紅の“袴”を着て、その上から“単”“五つ衣”“打ち衣”“表着”を自由に重ねて、“唐衣”を着て、このひらひらの“裳”を腰に付けるんだと」


「この世の物とは思えない程面倒な服ですね…」


エレン達兵団服は、ベルトが厄介と言えど慣れてしまえば簡単であるし、早く済む

それに引き換え、聞いてるだけでも十二単は至極面倒そうな物であった



「襲(かさね)や柄、質なんやらで自分のセンスの良さを表してたんだ」

「かさね…?」


「季節に合わせて色の組み合わせがちゃんとあるらしい、花とかの色に見立ててな。
ほら、表と裏で色が違うだろ?
この服は…春か。
一枚目の表が紫、裏は青。早蕨(さわらび)だな。
二枚目の表は薄紅、裏が萌黄(もえぎ)。桃の色だ」


「確かに…なんか春っぽいし、見た感じ相性良いですね…綺麗、」


「俺はこういうのよりも、小袖腰巻の方が地味で好きだけどな」


「…(もう聞かないでおこう)」



また語られる、と思って、エレンはそれ以上何も言わなかった

兵長の垣間見る語りは、ハンジさんとまではいかないがそれなりなんじゃないだろうか…



「着てみるか?」

「へっ!!?」


ここで、隣に座るリヴァイから持ちかけられた提案

動揺するのも当然だった

「どうせこのまま上層部に渡したら重要文化財とかで保管されんだろ、それまでに着とくか?」

「いや、これ女性の服なんですよね?」

「それがどうした」

「いやどうしたじゃなくて!!!」


確かに、こういった貴重なものは憲兵団預かりとなり、文化財として丁寧に保管される

お目にかかることも、勿論着ることもこれから先無いであろうが…

エレンがつっこみたい所は、ありすぎて困るほどだった


「大体これ埃被ってますよね?」

「間に挟まってる五つ衣は大丈夫だろ」

「着付けとか…」

「んなもんどうだっていい。一枚合わせて重ねたら仕舞いだ」


どうやらリヴァイは、十二単全て着るように言っているのではないらしい

一枚埃を被っていないものを出して、それをただ着ろ、と


エレンがリヴァイを見てみると、表情はかなり真剣だ

冗談ではないらしい




「…一回だけですからね」

「どうせ一回しか着れねぇよ」


渋々、といった感じで


エレンは五つ衣から一枚、衣を取り出した


「壷菫か…紫に薄い青だな。お前それが好きなのか?」

「偶々取っただけですからっ!!」


そんなノリ気で着るのではない、冗談じゃない

と、言いたいであろうが、気分を良くしているリヴァイに気を悪くさせるなんて出来るわけがなく


はぁ、と溜め息をつき、エレンはその衣の裾に腕を通した



「…エレン、お前…」

「何ですか、着せたのに似合わないとか言わないで下さいよ」

「いや…お前、似合うな」

「は?」

「それだけかっさらっとくか」




真顔でとんでもない事を言い出したリヴァイの言葉を撤回させるのに、エレンは1日の半分を費やした





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自分、生まれも育ちも現在も京都でして
自分の県をリスペクトするのもあれですが、京都大好きです
特に平安、たまらんです

リヴァイに語ってほしかっただけです

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