進撃ss

□エイプリルフール
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「エレン」

「?」

「…別れよう」


ザァッ、と
俺達の間に流れた風が嫌に強く感じた

それでも、兵長から言われた言葉はその音に消されない


「な、んで…」

「俺達は人類に魂を捧げた身だ。やはりこうして俺達だけ浮かれるのは良くない」


木霊する


何度も何度も頭でその意味を復唱して


「で、も…!それを考慮して、よくよく考えて!それでも一緒にいようって!!それで…」


「…終わりにしよう、エレン」



また風が吹く

この季節、暖かいはずの風が冷たい


その冷たさが、俺に現実味を与えてくれる



あぁ、俺、嫌われちゃったのかなぁ


この人はとても優しい人だから、こうやって俺を極力傷つけない言葉を選んでいるんだ

身分や立場のせいと称して、俺に非はないと思わせるように


本当は、俺が何かしちゃって、兵長に嫌な思いをさせちゃったに違いない



「…分かり、ました」


言葉は、それしか出なかった


「兵長が、そういうなら…」

「…悪い、エレン」

「いえ、大丈夫です
元々駄目だったんですよ、俺達だけが幸せに過ごすなんて…」


兵長も、耐えきれなかったんだ

散々仲間を犠牲にして生きているのに、その中心である自分達が良い思いをして、毎日楽しく生きるのに

俺が何かやらかしたのも理由、
けど、根本にある『俺達が恋愛をする事』
それ自体にも嫌悪感を持っていたのだろう

正直、俺も少しはその気持ちがあったから



「…これからは、普通の上司と部下ですね」

「そうだな。人類最強と人類の希望だ」

「…そうですね」



遠回しに気づかされる、俺達に課せられた重い重圧

それを背負いながら、お互い生きよう、と



「…兵長、お茶入れてきますね」

「あぁ」


そういって給湯室に向かうべく執務室の扉に手をかける
何となく、この扉を出たらそれが終わりの合図な感じがした


不思議と、悔いも悲しみも感じなかった


「…今までありがとうございました、兵長」

恋人、として、色々してもらって。色々、教えつてもらって


「…俺の方こそ、ありがとう」



その言葉だけで、十分幸せだった





扉を閉める音は、2人の鼓膜に酷く響いて聞こえた








――――――――――

エイプリルフールって題名だから、兵長が嘘ついてるって思いました?
でも残念!そんな貴方はひっかかりました!!

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