進撃short

□よっぱらいへちょ
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調査兵団全体で行う新年度パーティー

4月の頭に開催され、目的は「本年度も頑張りましょう!」といった所だ


正直賑やかな場所は嫌いだ、うざってぇ

それでも立場上、行かない訳にもいかず
仕方なく、仕方なく来てやった



せめてもの癒やし、と思い探したエレンは幼なじみやら同期やらに囲まれていて近寄れない

エレンを呼ぼうとしても、あのミカサという女がエレンにバレないように俺を隠し
そうでなくともハンジやエルヴィンが俺に絡んで来るし、兵士達が次々と俺の周りに集る



くそ、うぜぇ

俺はエレンと話したいんだ

エレンもエレンだ、気付けよ
あの女に時々もの凄い体勢で視界奪われてるのに違和感持て
その時のあの女の勝ち誇ったような顔…非常にイライラする



苛立ちは募るばかりだ

紛らわすように、ハンジやエルヴィンに進められる酒を煽るように次々と飲む

本来ハメを外さねぇように節度は保って飲酒をするから、こうしてグビグビ酒を飲むのは初めてかもしれない

そんな俺に調子に乗って2人も酒を次々渡していく



楽しんでやがんな、くそ


だが視界の端でエレンと戯れる輩に、どうしてもモヤモヤとしたものが溢れ出てしまう

気持ち悪くて、そのままの勢いで酒を胃に入れていく




あぁ、他の野郎がエレンに話しかけてやがる

やめろ、俺だって話せてねぇってのに

あいつは俺の監視対象で、俺はあいつの監視人で

だから、俺はあいつの一番近くにいるべき

なのに喋れない

普段から素っ気なくて、日々あいつにビクビクされてるのは知っている

違う、俺はそんな気なくて、ただ育った環境で目つきも口調も足癖も悪くなっちゃって

こわがらせたいんじゃない、ちがう、そうじゃない

すき、すきだから、ちゃんとすき

すきだから、だからしゃべれよ、ちかくにこいよ、なぁ、なぁエレン




「…っやだあぁ…!」


「「へ?」」


隣のハンジとエルヴィンが声を揃えて変な声を出した

知らない、そんなのどうでもいい


「やだ、エレン、やだ、喋りたい、喋りたいっ…!!」

「ちょ、リヴァイッ?」

「しゃべりたっ、喋りたいっ…ふぇ、ぇえぇ…!!」


「…リヴァイ、落ち着きなさい、リヴァ、」
「エレンと喋りたいぃ…!やだ、きらわれたっ、ない!!ふえぇぇっ…!!」






歯止めが利かなくなって、止めどなく口から本音が零れ出す

ハンジとエルヴィンはオロオロしていて、周りも慌てふためいていた


ー…人類最強が、可愛いく泣いている


そんな状況がホール全体に知れ渡り、リヴァイ見たさに兵士がドッと、さりげなく集まる



リヴァイが泣いた原因でもあるエレンにも、そのリヴァイの泣き声は聞こえた訳で

何事か何事かと思い、どうやらエレンもリヴァイの近くに寄ったらしい


「あっエレン!!ちょっと来て!!!君いなきゃ解決しないんだよー!!!」

「な、リヴァイ。落ち着きなさい、な?」

「うぇぇっ…!っひ、やらぁぁ…!エレッ、エレンッ、ッふぇっ…」



事態の重大さにエレンも気づいたようだ

すぐにリヴァイの元に駆け寄り、リヴァイに視線を会わせ尋ねる



「兵長?どうしました?」

「っひ、ふぇ…、え、エレッ、ン?」

「はい、エレンです。何かあったんですか?」

「っっ…!エレッエレンッ!!エレン……!!」



エレンを確認した瞬間、リヴァイがエレンに思いっきり抱きついた

周りからの悲鳴やら、歓声やら

騒然とするホール内だが、当の本人はそれどころではなかった

気にする前に、エレンは頭がついていっていない



「へっへへへへいちょ…!?」


いつも威厳を持ち指導をしたり罵声をあびせたりする上司とは似ても似つかない豹変っぷり


ここでエレンは、リヴァイが無駄に酒くさいのに気がついた
近場のテーブルを見てみると、度数の高そうなお酒の空ボトルが4、5本

ハンジ達を見てみると、2人は申し訳なさそうに視線を彼方に反らした



ー…なるほど、兵長酔っているのか


何となく、エレンはここまでの経緯を把握できた

だが、何故リヴァイがエレン自信の名を呼びながら泣いているのか
それがまだエレンには分からなかった



「兵長、どうしちゃったんですか?」

「…っひ、ん」

「俺、何かしちゃいましたか?」

「ち、ちがっ…!」

「じゃあどうしたんでしか?」

「………」


なるべく甘い声で、それこそ子供をあやすような声色でエレンはリヴァイを慰める

大分落ち着いたのか、リヴァイのしゃくりは止まりかけていた


だが、まだアルコール自体は抜けていない

証拠にリヴァイはまだエレンに抱きついたままである



「…エレン、と、しゃべりた、かった」

「へ?」

「っあいつらばっか、ずるい…!おれもっ、エレンと喋ってたいのに…っふぇ、ぇぇぇ…」


「あぁぁ兵長!泣かないで!!」


また泣き出すかと思い、必死に背中をさすり気持ちを落ち着かせる

何とか抑えられたようで、エレンはホッと息んついた


にしても、
兵長、可愛いすぎだろ


と、エレンは内心萌えすぎて死ねる勢いでオーバーヒートしていた



「そっそれに…!」

「?」

「エレン、いつもビクビクしてる…!おれがっ、エレンに酷いことしてるからっ…!!つい足上げたり、キツく言ったり、睨んだりっ…!!

ごめんっ、なさ…!!ちがう、ちがう!!ホントは、そんかのしたくなくてっ…!!
癖でついっ、やっちゃう、けど……ほ、ホントは、撫でたげたいしっ、誉めてやりたい…!!
だからっ、ぅえっ、ごめん、エレン……!!」


「…兵長、」


「嫌いにならないで、お願い、嫌いにならないでよぉぉ…!!!ふぇっ、ぅえぇぇぇ…!!」



言い切って、また本格的に泣き出した

その際も、「やだ」をずっと繰り返している
エレンに抱きつきながら、それはさながらすがりついているようだった



エレンはと言えば、先程のオーバーヒート状態から抜け出せないようで

いつも罵られている分、こうして泣きつかれる事への対処法が全く思い付かない


とにかく、このままでは例えお酒の力と言えどリヴァイの威厳が損ねかねない、手遅れかもだが

なのでエレンは、ひとまずホールの外へリヴァイを連れ出した。しがみつかれた状態で


周りからは、
「兵長ぐうかわ」
「もっと泣き兵長きぼんぬ」
「リヴァエレか…」
「いやこれはエレリじゃない?美味しい」
「リバ可だね」

といった、奇々怪々な言葉が飛び交っていた






――――――――――


「兵長」

「ぅえ、ぇ、ふぇっ…」

「兵長、ちゃんと俺の話も聞いて下さい」

「…ぅ、んっ」


宥めながら、何とか兵長に俺の話を聞いてもらえるように促す

未だに抱きつかれたままだが、兵長はコクリと頷き俺を見上げてきた

こんな時にあれだが、そのアングルは卑怯だ。兵長可愛い


「兵長、俺は兵長の事嫌いじゃありませんよ?」

「っ…!ほん、と?」

「はい、本当です」

「ほんとかっ?俺、あんなに酷い事してるっ…のに、嫌いじゃない?」

「はい。確かに人使い荒いけど、それでも兵長は優しいですよ?俺、ちゃんと分かってます」

「っ…よか、た、」

「兵長、俺、兵長の事好きです。好き、大好きですよ」


「っ…おれ、もっ!大好き、大好きだエレン…!!」

「はいっ」



普段の悪人面とは天と地の差があるくらいの顔だ

抱きついて離そうとしない様子からみて、まだ大分お酒は回っていると思う

それでも、その言葉はとても嬉しかった


「エレン…」

「はい、」

「……べ、と…」

「あ、眠たいんですか?」

「…ん……」



泣いて、叫んで、と体力を使ったから眠たくなったのだろう

本当子供のようだ


見た目に反して筋肉のせいで体重のある兵長を頑張って背に乗せ、ホール外の廊下を通り本部の兵長室を目指す


「寝ちゃっていいですよ」

「…………あ、がと…」


既に寝かけていたからか、兵長の寝息が聞こえてきたのはすぐの事だった



いつもは余裕な顔をして俺を扱う兵長だけど
こんな兵長も悪くないな、と、表情筋を砕けさせながら階段を上った











目が覚めた兵長が、残念な事に酔っ払った時の記憶を明確に覚えており、旧調査兵団本部に当分引きこもったという事実は、あの一件以来リヴァエレ・エレリに目覚めた者達に絶望的な衝撃を与えた

(「最悪だ…死にたい。いや死ねる。いや死のう。」)
(「兵長?いい加減部屋から出てきて下さいよ!へいちょーー!!」)



(「今日もリヴァイ様来てないの!?」)
(「リヴァイ様がいなきゃエレン君も来れない…」)
(「リヴァエレ見れない…」)
(「エレリが見れない…」)
(「リヴァエレリが足りない!!!」)


――――――――――

まっことすまんかった((スライディングアクロバットジェネラルロンダート土下座

可愛い兵長が書きたかっただけです
リヴァエレ、エレリ
何でもよかったんです

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