進撃short

□好きなんだもん
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嫌だ。

「まあ、兵士長様であろう方が。そんな事言っちゃっていいのかしら?」

イヤだ。


「はっバカ言え…俺は兵士長である前に1人の男だ。」


いや、だ。


「ふふっ、そうね…その言葉が聞けて良かったわ。」
「あぁ。ありがとな、アイデュラ」


ーーーーっ!!!

いやだ、いやだいやだいやだ!!!

兵長の、あんな、顔。
俺も、みた事ないのに


それを、あの女性が、見てて

やだ、やだ、見たくなかった!!








夜、いつも寝る前に兵長は地下室に寄ってくれる。
まぁ、手枷をする為なんだけど

でも、いつも他愛のない話とか、色々してくれて


一日の中で、俺は一番あの時間が好きだった

けど、なぜか今日の夜、兵長は来てくれなくて

おかしいなって思って、さみしくて


様子を見に行こうと、兵長の部屋に行こうとした


そしたら、そこに行くまでの廊下の端で、

兵長と、調査兵団の女性が話をしているのを見てしまった


すごい、綺麗な人だった
艶やかな黒い髪に、透き通ったような空色の瞳、綺麗な白い肌

夜だったから廊下は暗くて、
だけど、ほのかに灯る置き火で照らされてる兵長とその女性は
すごい、絵になってるっていうか
お似合い、だと思った


その光景を見た瞬間、何とも言えない黒く轟々とした思いが俺の中から溢れてきた


2人を、とてもじゃないけど見てられなくて


俺はすぐに方向転換して、元来た道を走って逆流した




ー俺は、兵長が、好きなのか

あの光景を見て、俺は初めて、自分の気持ちに気づいた


ー兵長の、彼女さんなのかな


だって、お似合いだし
兵長だって、恋愛の1つや2つするだろう

こんな気持ち、気づきたくなかった


だって、どうしたって俺は男で
あんな綺麗な髪でも、瞳でも、肌でもないし

第一、兵長は監視者で俺は監視対象

とてもじゃないけど、俺のなりたいような関係には、なれない


「兵長…好きです、ごめんなさい、好きなんです、兵長」



その夜、俺は一人で地下室で枕に顔を埋めて、泣いた
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