I WANT YOUR LOVE AND PLEASURE
□相互不足
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ー…今回は少々厄介だ、泊まり込みで一週間はかかる
そう言ってリヴァイが出て行ったのは、昨日の事だった
上流階級のお貴族様が、吸血鬼に襲われたらしい
人間の中でも、貴族というものはそりゃあある
まぁ、吸血鬼の貴族が表の世界では大財閥、というのはよくあるのだが
吸血鬼は、人間とは比べ物にならないくらいの知力・体力・精神力を持っている
元々数百年は優に生きれる輩だ、それもうなずけるのだが
リヴァイさんなんて、何歳生きてるか…聞いた事はないけれど
知力がある分、人間相手に上にのし上がるのは吸血鬼にとって容易い
だから、新聞でよく見る「○○カンパニー」なんていうのが「あーこれ吸血鬼の低貴族じゃないか、人間相手には偉いもんだな」と感じるのも多々ある事だ
話が反れた。
とにかく今回襲われた貴族というのは、吸血鬼の貴族ではなく人間の貴族だ
吸血鬼の貴族なら事を穏便に済ませられるのだが、人間となるとそうはいかない
何せ、ただの死体ではなく…血を抜かれた変死体なのだから
そこで立ち上がるのが、最高位に近い吸血鬼の貴族と純血種だ
吸血鬼の貴族の力で事件を隠蔽し、世間に公表する事実を操作する
そして純血種はー…まず、犯人を捕まえ始末する
人間に悟られないように、俊敏かつ隠密に
だからこの手の仕事は、元々暗殺に優れたリヴァイさんが頼まれる事が多い
あと…事件を目撃した者がいれば、その者の記憶を“操作”する
リヴァイさんはこれを酷く嫌っている
曰く、そのやり方が解せないらしい
普通に言わせれば、対象の血を自分の指に付着させ、印を書いたら終了なだけだ
だが、リヴァイさんは元々他人の血を嫌っているから、匂いを嗅ぐのも好まない。ましてや、その血を付着させるなんて…という事らしい
出かける前に盛大に血を貪られた
「お前の匂いと味を染み込ませる為だ」だと。
嬉しいのだが、そのおかげで昨日今日と貧血で寝込む羽目になっている
幸いにも2日とも学校もバイトも無かった。
だから誰にも心配をかけずに済むだろう
…にしても、長期の仕事の時に家に一人というのは、全く慣れない
リヴァイさんが長期でこなすくらいだから、勿論ハンジさん達も忙しい
だから、誰も呼べないし誰も来ない
こんな時に、リヴァイさんの家の無駄な広さを呪う
大きな箱の中で、ポツンと1人きり
明日からは学校もバイトもあるけど、それでも夜になったら孤独な世界だ
「…早く帰ってきて下さいね、リヴァイさん」
そう呟いて、まだ貧血でクラクラする視界に鞭打ちながら、ベッドから降りてリビングに向かった
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「ねーリヴァイ、機嫌直しなよ」
「うっせぇクソメガネ、黙ってろ削ぐぞ」
「おぉーこわっ!!これだからエレン厨の潔癖症野郎は困るよ」
「……。」
自宅を出てから3日
ようやく犯人も見つかり始末して、目撃者も粗方記憶を操作した
くそ、何でこんな目撃者がいたんだ。しかも改竄しなきゃいけねぇ場面見やがって
誰とも知らねぇ血の匂いが自分の身体からしてきやがる、気持ち悪ぃ
「…もう片付いたから帰っていいだろ」
「はぁ!?何考えてんのさ!!これからお貴族様に顔を出して事態の収集をしなきゃいけないんじゃないか!!
その時にあんたがいなくてどうすんのさ!!」
「…こっち側の貴族に隠蔽させたんだろ。だったら俺はいいじゃねぇか」
「そのこっち側のお貴族様がただ働きしてくれなかったんでしょ!!
純血種の貴方と謁見したいって申し入れなんだから!!」
「…面倒臭ぇ」
おそらく、
やれ我が娘を妃にとか
やれ私の血を差し上げますとか
やれ我が一族を“自由の翼”に、とかだろ
俺らの組織は選ばれし吸血鬼の貴族しか入れない
純血種が2名もいる組織だから“自由の翼”は権力が馬鹿高い、支持もある
それが目当てで介入したいという輩も多いが…んなもん目当ての貴族なんざこちらは願い下げだ
が、まぁ礼くらいはしなければいけない
面倒だが、これも純血種である俺の仕事だ
「エレン…変な輩に襲われてねぇだろうな…」
「一応眷属の鴉飛ばして見張らしてるんでしょ?」
「だとしても心配だ…ペンダント無しで歩けば悪性種がわんさか来やがる。
そうでなくてもあんな顔だ…人間相手でも襲われかねない」
「はいはいエレン厨エレン厨
後4日の辛抱だから頑張ってー」
「エレン…会いたい…」
とっととこんなクソみてぇな事件片付けてやる
いつも俺に見せるエレンのあどけない笑顔を思い浮かべながら、そう意気込んだ
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