イチニ書きさんに102のお題

□006 切なさ
1ページ/1ページ

どうもこの時期になると寂しくなる。
ていうのも、葉っぱとか赤く綺麗に染まるのに、冷たい風に吹かれて落ちていく。

太陽の暖かさも少しずつ少なくなるし。

「おい、デュオ」

「ん?何だヒイロ」

「何度呼びかけても反応しないお前が悪い、出かけるぞ」

「え、どこへ?」

「気にするな、支度をしろ」

ヒイロもタンクトップの上にパーカーを着る。
流石にタンクトップ一枚じゃきついのか?何て考えながらデュオも中に着こむ。

「秋でも寒いからな」

そう言われて、最近からちゃんと着込むようになった。

そして支度が出来てヒイロと共に家を出る。
手を繋ぎながらあるく秋の夕暮れ。
切なさを誘う風と空気。
そんな雰囲気をヒイロはよく纏っている。

「なぁ、ヒイロ」

「どうした」

「あれ………」

大きな枯れ木に付いていた最後の紅の葉が風に吹かれ、くるりくるりと舞っている。

「木が、冬に備えている」

「切ないな……秋ってのは」

繋いでいる手をギュッと握る。
ヒイロも答えるように握り返す。
優しく柔らかく。

「そうだな」

何故かデュオの瞳が濡れ揺れていた。
ゆっくりと優しくでデュオの体を抱きしめた。

「だが、また葉はなる。新しい芽を吹いて、命を宿す」

切ないだけじゃない、新しい命を宿すサイクルなのだ。

「そっか、そうだな……」

歩いてたどり着いたのは見晴らしのいい公園。
街が一望できる高さで、また赤く揺れる太陽が静かに沈んでいく。

静かに流れる風に当たりながら二人は地平線へ沈む太陽を見つめていた。



end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ