ガンダムW

□年に一度のこの夜を
1ページ/2ページ

デュオに誘われたのが確か一ヶ月前だ。あの時は来月イイもん見せてやるから地球に降りようぜ!と言われた。どこに降りるのかと問えば日本だなんて元気に答えるこの煩い死神を呪った。ブリュッセルあたりならまだしも殆ど真反対の島国なのだから。

休暇を与えられているが何かと職場が近い方が楽でありがたい、いつ呼び出しを食らうかもわからない状態で出かけるのも気が引ける。ただでさえ少し前まではテロリストだった、Eve Warが集結しガンダムを廃棄して数年は経っているが未だにその傷跡は治りきってはいない。

「おい、ヒイロ聞いてんのかよ」
「……」
「はあぁぁぁ…ほら、とりあえず車に乗れよ」
「構わん。俺が運転する」
「行き場所までわかんねぇヤツに任せられるかっての。大人しく乗れよ」

呆れた顔をしつつも柔らかい笑顔に考えていても仕方が無いと思考を捨てた。そうだな、確か浴衣を借りにいくはずだ。着付けはできるため一式を借りてくるだけでいいので気は楽だ。


車を飛ばして十分程度で店に着いた。中に入ると様々な絵柄が立ち並んでいる。金魚やうちわ、鯉、花々の鮮やかな色。



ヒイロは紺色の浴衣に、デュオは悩んでいた結果店員に女性物の浴衣を提示され渋々了承し無事?に決まった。

下駄や帯、下ばきも借りて家へと帰ってきた。


時間も夕方に差し掛かり着付けへと移る。本当ガンダムパイロットになる前の訓練の一環で何故こんなものまでやらせられたのか意味は分からないが、今思うとやっていてよかったと思う。







夜七時。近くの山の神社で祭りがあるようだ。そこへヒイロとデュオは向かう。着くと人でごった返しの状態で進んでいく。やきそば、かき氷、あんず飴、金魚すくい。コロニーでは見たことのないものばっかり。知識はあってもやったこと、食べたことなどはまったくない。デュオの瞳は輝いているように見える。

「何が欲しいんだ」

「えっ、何が…」

「別にいい。食べたいものでも買ってやる」

「サンキューヒイロ!」

そう言いながらあんず飴が気になるようで買ってもらった。

祭りを満喫しながら山の裏方へヒイロを連れていく。いったい何なんだと言われつつも適当にあしらいながら連れていく。

森と化したそこに一か所開けた場所がある。周りに人の気配もないししゃべり声も聞こえない。


「デュオ、こんなところへ連れてきて何がしたいんだ」

「何がしたいって言うか、あれ。みてみろよ」

デュオが指さすのは空。藍色の混じった絨毯に散りばめられた星々。星の川、天の川が綺麗に見えていた。

「なぁ、昔聞いた話なんだけどさ。織姫と彦星ってのがいて、いろいろあって一年に一回しか会えないって話なんだけどさ」

「省略しすぎだろう。だが、川に遮られ年に一度、この七夕の日にだけ会えるという話だな」

「オレ、それ聞いたときに普通にヒイロと会えることができるのに安心したんだ。だって、年に一度とか…」

「伽話にすぎん。それに」

唐突に指でデュオの顎を掴み唇を重ねる。


「今、共に暮らしている。いつでも会えるだろう」

珍しく、ふわりと笑うヒイロに心臓が高鳴るのがわかる。

「あぁ、そうだな!」

ニッと笑い、デュオはヒイロの手を引きながら満足げに帰って行った。


end
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ