ガンダムW

□聖なる夜に重なる想い
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結局踊り明かして帰ってきた時間は夜中の三時。月は真上を通りこしてとっくに傾いている。こんな時間では流石に人の気配もない。

ちょっとだけ高めのヒールで踊り続けりゃ足も痛くなる。

「ヒイロー、おぶってくれよ」
「そうだな。元はと言えば俺のせいだからな」

珍しく素直に聞き入れてくれた。
踊り疲れて着替える気も失せた今はおぶることに抵抗があったのか俗に言うお姫様抱っこの状態だ。

そう、あまりの面倒臭さに衣装を脱いでいないのだ。ヒイロはとっくに着替え終わっていた。

「ふ、わぁ...」
「眠そうだな」
「そりゃあオレも家出る前に頑張ってきたからな、お楽しみはまた夜な」

ふっ、と笑いながらヒイロは答えた。
抱き抱えられている状態で伝わる振動によって、デュオは深い眠りへと沈んでいった。

そして目が覚めた頃は昨日と同じ昼あたり。隣で寝ているヒイロの元へと近づいていく。暖かく再び眠りへと落ちそうになるが、料理の支度をしなくては。クリスマス仕様のオレの実力を見せるんだとうっつらとした頭で思いながらゆったりと上半身を起こす。気付けば着たままだったドレスも今は普段の部屋着になっているし、髪も痛まないようにと解かれていた。

そして降りようとした瞬間に袖を引かれる感覚がした。

「どこへ行く」
「おぉ?起きてたのかヒイロ、今日のディナーの買い物しなきゃなんねーし。一緒に行ってくれんだろ?」
「あぁ」

やはり珍しく快諾するヒイロ。
軽くサンドイッチを胃に収め、大きめのスーパーへと二人は向かった。
買うものとしてはあまり多くはない。

「なあヒイロ。クリスマスって何食うもんかな」
「知らん。しかし、よく見るのは七面鳥だな」
「えー、まじかよ...七面鳥買う?」
「まずここでは売っていないだろう...それに二人で食べられる分だけにしておけ」
「じゃあ鳥の手羽先でいいか?」
「あぁ」

クリスマスは何を食べるものかと相談しながらゆったりとスーパーの中を歩く。一通り見て必要なものはすべて買ったと確認してから家路へと行く。

クリスマス専用ディナーだ!とデュオが騒ぐのでそのまま仕方なくデュオの手伝いをする。一人でやるより早いし楽しいぜと彼は呟いていた。ヒイロが帰ってくるのが遅い日はすべて任せっきりになっていることが多い。

数時間をかけスープもつくり、七面鳥の代わりの手羽先の揚げも出来た。

「やっとできた...腹減ったぁ...」
「座っていろ。今もってきてやる」

そう告げて皿に綺麗に盛り付けていくヒイロ。やはり手先が器用だと感じる。

「さんきゅーな」
「食べるぞ」
「「いただきます」」

作り上げたものをパクパク食べていくデュオ、余程空腹だったのかと考えつつヒイロも口にスープを運ぶ。見ていてデュオは飽きない。コロコロ変わる表情に最初は煩いとさえ思っていたが、今では落ち着く。何よりコイツの笑った顔が特にいい。死神と自分では言っているがそんな名前には似つかないくらいデュオの笑顔は眩しいんだと感じ始めたのはいつだったか。

食事を済ませて片付けはやっておくから風呂入ってこいよーといわれ、そのまま風呂場へと向かっていく。

一方デュオは昨日作ったケーキを2切れほど皿に乗せ再び冷蔵庫へとしまうと、ヒイロと同様風呂場へと向かった。

「ヒイロー、入るぜ」
「何故だ」
「後で入ると寒ぃし、いいじゃねぇか」

本人の気持ちなど知らず了承を得ないまま風呂場へと入っていく。案の定まだヒイロは頭を洗っている途中だった。デュオは一度シャワーを浴びてヒイロの髪を洗い出す。驚きはしたが後は任せることにした。

「前より伸びたんじゃねぇの?」
「そうだな、そろそろ切ろうかとも思っている」
「いっそオレみたいに伸ばしてみれば?」
「鬱陶しくてたまらん」

そうこうしているうちにヒイロの髪と体を洗い終え、そのままデュオの方を洗うことになる。

「やはりお前は髪が多いうえに長い」
「だろ?」

共に風呂に入ることも多い二人。ヒイロはデュオの髪を洗う、いや触れることが好きだった。大した理由などはないがするすると滑るような髪がなんとなく好きだった。

体は自分で洗えと言うと先に浴槽へと浸かる。普通に寒いのだ、まだ入っていなかったため冷えきっている体を温める。あらってやったじゃんかよと愚痴をこぼすデュオは体を洗い始めていた。

洗い終わる頃には先に出るとだけ言い残し浴室にはデュオだけが取り残された。

先に出たヒイロは下だけ部屋着を履いて寝室で端末をいじりながら座っていた。送った報告書の結果と新しい情報についてのものが暗号化されたメールとして送られた。こちらにハッキングを仕掛けてきた相手が狙っているものや暗索していること。どうしたものかと考えていると端末が宙に浮いた。
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