リトルバスターズ〜罪の在り処〜

□第七話 単細胞
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「バトル・・・スタート!」


恭介が戦闘開始の合図を出すとともに周囲から大量の武器が投げ込まれる。勝人と真人はそれぞれ目を瞑って武器を選び取る


「俺は・・・これか」


勝人は長さ二メートルはありそうな物干し竿(あんなもの誰が持ってきたんだろう)を勝人は軽々ともっている。一方真人は


「・・・・・・」


小さな水鉄砲を片手に固まっていた


真人は水鉄砲を勝人に向けて撃った


ちょろろろ


弱弱しく水が出た。勝人には届かない


「うおおおおおおおおおお!」


前々から思ってはいたけど真人はここぞという場面での引き運がとことんない。そんな真人を勝人は憐みとも呆れとも取れる目で見ている


「ちくしょう!こうなったらものすごい勢いで撃って吹っ飛ばしてやる!」


真人はものすごい勢いで水鉄砲を撃った。勝人には届かない


「なんでだー!」


真人は300のダメージ(おもに精神に)


というかいくら勢いよく撃ってもあんな小さな水鉄砲じゃ威力なんか出ないと思う


「今度はこっちの番だ!」


勝人は物干し竿を振り回した


「ぐぉっ!」


真人に200のダメージ


「くそっ!食らいやがれー!」


真人は全力で水鉄砲を撃った。何も出ない


「もう水無くなったのかよ!」


真人は給水場へと走る


「はあ、付き合ってられねえな」


そう呟く間に勝人は真人に追いついていた


「これで・・・終わりだっ!」


勝人は全力で物干しざおを振り下ろした


真人に600のダメージ


「ぐぉぉぉぉ!」


「楽な勝負だったな」


「勝者、高宮!」


周囲からドッと歓声が上がる


「じゃあ高宮、負け犬に称号を」


「単細胞」


真人は『単細胞』の称号を手に入れた


「うおおおおぉーっ!そんなんいるかぁぁーーっ!」


周りにいた生徒が勝人の周りに駆け寄る。その中心にいる勝人は・・・とても、楽しそうだった


それは良いことのはずで、僕は勝人がそうできるように頑張っていたはずなのに、なぜか僕はそこにいるのが苦しくなり、一人その場を離れて行った





逃げ出すように教室から去ってきた僕の足は自然と一階の、渡り廊下に向かっていた


ニャーニャー


渡り廊下ではやはり鈴が猫たちと遊んでいた。別にとくに鈴に用事があったわけではない。ただ、鈴に会いたかった


「鈴」


声をかけると鈴は突然のことで驚いたのかビクッとして振り返った。でも僕の顔を見ると安心したように緊張を解いた


「なんだ、理樹か」


「うん」


鈴の隣に座る。付き合い始めてからは僕もよく鈴とこうして猫たちと遊んでいたため、僕がきても猫たちは気にせず遊んでいた


「どうかしたのか?」


突然の問いに僕は黙る


「・・・何で?」


「少しいつもより暗い」


「うん・・・ちょっとだけ、ネガティブになっちゃって」


「高宮のことか?」


その問いがあまりに的確で僕はただ黙ってうなずくことしかできなかった


「・・・今日、勝人と真人が喧嘩したんだ」


僕は今日あったことを話し始めた。鈴はそれをただ黙って聞いている


「僕はそれを止めようとしたけど、何もできなかった」


そう、僕はあの時何もできなかった。ただ見ていることしか・・・


「でも、恭介はそれをあっという間にとめて見せて・・・最後には勝人、笑ってた」


勝人が転校してきたときから僕がどんなに頑張っても出来なかったことを恭介はあっさりとやってのけたのだ


「それを見たらなんだか、あー・・・僕何やってるんだろう、って思っちゃって」


それで思わず逃げ出してしまった


「ホント、情けないよね」


「確かに情けないな」


鈴のはっきりとした物言いに苦笑する


「でも・・・」


「?」


「あたしは理樹のそういうところも好きだぞ」


僕は呆気にとられてポカーンとしてしまう。しかしそれはすぐに笑いに変わった


「なんで笑うんだ」


「鈴、言ってて恥ずかしくない?」


悪戯っぽい声で言う。すると鈴の顔がカーッと赤くなり


「う、うっさい!そんなこと聞くなボケぇーっ!」


殴られた。でもその腕には殆ど力が込められていなかった


「あはは・・・ごめんごめん」


そっと鈴の頭をなでる


「うゆ・・・」


鈴は気持ちよさそうに目を細めた。そしてしばらく見つめあった後僕らはゆっくり顔を近づけそっと唇を重ね合わせた

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