壊れた世界、希望の国
□第二章
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その日、屯所にて臨時の召集がかけられた
もちろん先の事件の為である
市中見廻りの隊士も集められ、事は急を要した
普段なら、土方がたしなめなければ静かにならない隊士達も
皆、強張った表情で局長を見やる
「皆、急ですまないな、少し厄介な事件が起きた、知っている者も多いと思うが今日の正午過ぎ、かぶき町内にある定食屋で変死体が発見された」
近藤は続ける
「そこで…一つ気になる情報があってだな、目撃者の中に白髪の男を見たという奴がいるんだ」
近藤の言葉に、部屋はザワリと騒がしくなる
「オイ、静かにしろ、テメーら会議中に私語した奴ァ切腹だってこと、忘れてねェよな?」
土方は隊士達を睨み、一喝すると刀に手を伸ばした
その様子に、皆息を飲む
部屋は再び静けさを取り戻した
「まぁまぁトシ…落ち着け」
近藤は、中腰になって足を一歩踏み出し斬りかかりそうな姿勢の土方の肩を軽く叩く
向かい合って座る沖田のニヤリと笑った顔に、抜刀しそうになるのをこらえ、土方は舌打ちをして腰を沈めた
「それでだ、事情聴取をしてみて分かったんだが、客は銃声が聞こえ店から逃げたそうだ…だが、あの現場を見る限り、拳銃であそこまでの被害が出るとは思えないな?総悟」
一番始めに現場に入ったのは、沖田だった
「…ありゃァ、人斬りの仕業でさァ、あんなにド派手に殺りやがって」
「そこがまず謎だ、そして……聞けば、少女が居合わせていたようなんだ、拳銃で撃たれたのはその少女…らしい、だが、店内に残っていたのは三人の男の、死体だ」
「その女は何処に行ったんですか?」
山崎は、真っ直ぐに手を挙げ、神妙な面持ちで近藤に尋ねる
「…辺りを捜索したが見つからなかった、行方がわからなくなっている」
隊士達は、また各々話始めるが
先程の土方の言葉を思い出し、更には自分達に向けられている鋭い視線を感じて自主的に静かになった
「まだ謎が多いところだが、白髪の男が居たと言う情報がどうも気になる、最近江戸で高杉に似た人物を目撃したと言う情報もあるしな」
「高杉…あの過激派の高杉晋助か」
土方の表情が険しくなる
「そうなってくると、やはり白髪の男と言うのは…」
「白夜叉ですかィ」
「俺もそう思っている、奴等は攘夷戦争後、共に姿を消している、今も二人で行動している可能性が高い」
「チッ…面倒なことになりやがった」
「これ以上、被害を出さない為にも、今以上に慎重に任務に当たって欲しい、今から少女の特長を記した紙を配る、見廻りの際は聞き込みも忘れずに行ってくれ」
近藤の「解散!!」という声に
威勢の良い、男達の返事が聞こえた