空を仰ぐ

□第一章『自分の寝言で起きた時の恥ずかしさは尋常じゃない』
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「いや、うるさいのは銀ちゃんアル」
「何寝ぼけてんですか、銀さん」

銀時が目を開ければ、目の前には見慣れた光景が。
向かいのソファには、神楽と新八が不思議そうに首を傾げていた。

「…??あぁ…夢、か」
「まったく…どんな夢見たアル、工事現場で酢昆布を食べる夢でも見たアルか?」
「銀さん、かなりうなされてましたよ、起こそうかと思ってたくらいですから…って神楽ちゃん。それ、どんな夢」
「新八、酢昆布を馬鹿にしたらいけないネ、酢昆布は何処にでも持っていけるし、手軽に栄養補給出来る万能食品アル」
「いや、酢昆布を馬鹿にしてるわけではないんだけどね」

かぶき町にある万事屋の一室。
どうやら二度寝をしてしまったらしい銀時は、のそのそと体を起こし、ボサボサの髪をかきむしる。
こうして、いつも通りの一日が始まった。

銀時がソファで寝てしまうのは、よくあることで、さして二人は気にもせずテレビ鑑賞をしていたのだが。

「…なんか眠気がとれねぇなぁ、頭いてぇし」
「そりゃそうアル。あんだけうなされてれば、寝た気しないネ」

神楽は、銀時が目が覚めるのを待っていたようであった。
立ち上がると直ぐ様、台所へ向かいカチャカチャと食器を用意し始める。

「銀さん、さっきどんな夢を見たんですか?」
「…うーん、まぁ昔の夢かなぁ」
「そうですか」

銀時は昔のことを語りたがらない、というよりは自分達が聞かないからかもしれないが。
新八も銀時の過去に興味がないわけではないのだが、話さないものを無理に聞こうとは思わないし、そんな野暮ったいことはしない方が良いと考えていた。

銀時の過去で知っていることは、攘夷戦争に参加していたこと。その時、白夜叉と呼ばれていたこと。
このくらいだろうか。
長い付き合いの中で、あまりにも新八と神楽の二人は銀時の過去を知らなかった。

「さぁ!目が覚めたら早く朝飯食べるネ、今日は卵かけご飯に海苔付きで豪華アル!!」
「マジでか!!…ってなんか言ってて悲しくね?コレ」
「…ま、まぁまぁ。美味しくいただけるご飯があるだけで、幸せなことですから」

新八がホカホカの飯をよそい席につくと、三人は行儀よく、両手を合わせて顔を見合わせる。

「それでは…」
「いただきまー…」







ダンダンダン!!

「?…ったく、誰だよ」

その時、タイミングを見計らったかのように、玄関の戸を叩く音が聞こえてきた。

「んだょ、こんな朝っぱらから!!しかも飯どきに!!」
「空気読めない奴だナ、まだご飯食べてないアル!!」

と言いつつ、神楽の茶碗には早くも飯が無くなっている。
口のまわりに米粒を付けながら、「ほらヨ」と新八に空の茶碗を渡し、すでに二杯目に突入しようとしていた。

「はいはい、今行きますよ。僕が出ますから二人は食べてて下さい」

山盛りの飯入り茶碗を神楽へ渡し、新八は玄関へ向かった。






 
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