壊れた世界、希望の国

□第七章
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スナックすまいる裏口にて
鬼兵隊と戦闘を繰り広げていた真選組、二番隊と三番隊

刀を交えながらも、頭の中では作戦の成功を確信していた
未だ戦が平行線を辿るなか
突如、爆発音が辺りに響き、状況は一変する

「な、なんだ!?…爆発!?」

永倉は音のした方へ視線を向けた
その時、目に飛び込んできたのは一人の人間が炎に包まれ、地面に崩れ落ちる瞬間である

「…は?アイツが爆発したのか!?」
「な、永倉隊長!!あいつ、隠し持っていた爆弾で自ら…」
「はぁ!?なんだと!?」

その一つの爆発を切っ掛けに、あちらこちらで
先程と同じ様な音が聞こえ始めた

「おいおいおい…正気かよ!?……斉藤ぉ!!聞こえるか!?」
「なんだ!?」
「奴等、自爆しやがった!!少しでも怪しい素振りを見せたら、巻き込まれない様に距離をあけろ!!」
「わかった!!」

少し離れた場所で
同じく戦闘中の三番隊隊長の斎藤は、永倉からの注意をそのまま部下に伝え
自身も、その時相手をしていた浪士を注意深く観察しつつ刀を振るう
だが、どうしても相手の手元を見れば反応が遅れてしまうもの
その僅かな隙をついて、敵はここぞとはかりに攻めてきた

「…くっ」

なんとか攻撃を受け止めれば、日本刀独特の重い金属音と共にカタカタと二つの刀が交差する



「…売国奴は」
「…?」
「俺達によって滅ぼされる」

男は低く唸るような声で、そう呟いた

「なんだと…?」
「そして新しい国を、世界を、俺達が創造するんだ!」

両者が動かなくなったその時を待っていたかのように
男は不気味な笑みを口に浮かべると、その口を使い、懐から伸びた紐を加えた

「幕府の犬め、テメェもこれで終わりだ」
「は?…なんだよ、その紐」

…紐?………まさか
そう気付いた時には遅かった
カチリと何かが外れる音がする

これは、手榴弾━━━

「鬼兵隊万歳、我ら侍の国に栄光あれ!!…ひゃはははは!!」
「…!!しまっ…」

























一方、店前では一番隊が鬼兵隊相手に同じく戦闘中
沢山の男たちが、あちらこちらでうなり声をあげている
その中でも一際激しい攻防をしていたのは、戦場にそぐわないチャイナ服を着た少女と、真選組内では若い青年である
神楽はマシンガンである傘を使いつつ、沖田の素早い攻撃を避けていく
かたや沖田も銃弾を見切り、反撃のチャンスを窺っていた



「…ん?なんだヨ、今の音…」

神楽は何処からか聞こえる爆発音に、思わず意識をとられてしまう
その時を見逃さす、沖田は一気に距離を詰め、刀を降り下ろした

「余所見してんじゃねーよ」
「…わっ!!」

ザクリと斬りつけられた腕からは、血が溢れ
神楽の色白な肌をすぐに赤く染めていく
反射的に蹴りあげた足は虚しく空を切り、すでに標的は後ろへと移動していることを知った

「チャイナ、俺はこっちだぜ?」

沖田は少女の背中を足で蹴り、そのまま地面に押し付ける形で踏みつける
そして俯せに倒れた神楽の細い両腕を素早く後ろに回し、手錠をかけた
一瞬の出来事である

「!?…外せ!!」
「無駄だ、暴れんな」

沖田は暴れる神楽の腕を更に踏みつける
もちろん、先程斬りつけた方の腕だ

「…!!」

傷からは押し出される様に再び血が流れ出た
なおも沖田はグリグリと足を捻り、傷口を地面に擦り付ける

「暴れんなって言ってんのが、聞こえねェのか」
「離せ…この……サド野郎!!」
「チャイナァ、てめェには聞きたいことが色々あるんでィ、そう易々と逃がしてたまるか」
「っ!!…私をどうするつもりネ!!」
「さぁ?それはこれから考えるさ」

首をなんとか上げ、鋭い眼光を沖田に向けるも、それも全く効果を示さない
沖田は勝ち誇ったかのように神楽を見下し鼻で笑うと、ちょうど浪士の男を縛り上げていた仲間を見つけ、「コイツも連れてけ」と声をかけた

「離すアル!!」
「ほら歩け」

沖田は神楽を立たせると、男に渡す
男は抵抗する神楽を押さえ付けながら、パトカーに連れていった

「…ペッ」
「うわっ、コイツ唾吐きやがった!!」
「汚ない手でレディに触るんじゃないヨ」
「…んの野郎!!」

力強く車に押し込められ、動き出す直前まで沖田を睨み付ける神楽は
冷笑を浮かべる沖田に対し、いーっと歯を見せて顔をくしゃくしゃにした









 
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