壊れた世界、希望の国
□第四章
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鬼兵隊
徳川茂茂暗殺計画
城を抜け、町に出向いてきた茂茂を警備が手薄なところで狙いうつ
銀時はこの計画の要となる人物に会いに、再び船を降りていた
「銀ちゃん!!これから何処行くアル」
「顔馴染みに会いに行くんだよ」
顔馴染みとは、戦争で沢山の仲間を失った銀時にとっての
数少ない、古くから付き合いのある友人のことだ
その友を、今回の計画に引き入れる為
話を持ち掛けにいくところであった
旧友との再開に胸を踊らせているかと思えば、銀時の表情は暗い
今回は遊びに行くわけではないのだから当たり前と言えば当たり前なのだが
作戦に参加させる
つまり交渉をしにいくのだ
これは頭が痛い
銀時は交渉事が得意ではなかった、心理的な駆け引きが苦手…
否、全てが面倒に感じて投げ出したくなってしまうからだ
高杉に行きたくないと、言ってはみたものの
「テメェが行け」の一言で返されてしまった
故に、先日の騒動の詫びも兼ねて、渋々こうして町に出てきたのであった
「銀ちゃん、銀ちゃん!!そいつ強いアルか?」
「んー?まぁ…やり合ったことはねェけど、一緒に戦に出てたくらいだからな」
お前何考えてんの、の視線を受け神楽は視線をそらした
別に深い意味はない、ただ、銀時の顔馴染みとはどんな人物なのか興味があっただけだ
思いの外気まずい雰囲気になってしまい、神楽は話題を変える
「そういえば、銀ちゃん達が殺すっていう…茂々ってそんなに悪い奴なのかヨ」
「あぁ将軍様ね…別にそいつが悪いわけじゃねーだろうよ、どうせ天導衆に良いように使われているだけの存在だろう…が、殺せば一気に国は乱れるし、それに幕府にとっても痛手だからな…だから殺っとく」
「へぇ…じゃあ、銀ちゃん達にとっては天導衆が一番悪い連中アルか?」
「そうだな、奴等はこの国を腐らせた、それに……」
松陽先生を俺達から奪った、と銀時は小さく
しかし、しっかりと声を漏らした
それはまるで、自分自身に言い聞かせるように
その言葉を噛み締めるように
神楽にもその声は聞き取る事が出来たのだが、言っている意味がわからず、不思議そうに銀時の顔を覗き込んだ
そんな神楽を見て、銀時は立ち止まる
「神楽、お前は連れていかねーかんな」
「え、なんでヨ」
「そこら辺ブラブラしてろ、すぐに戻っから」
「…わかったネ」
神楽は口を尖らせながらも
これ以上、何を言っても無駄だと思い素直に身を引いた
「…じゃあ、あそこで待ってるアル」
そう神楽が指をさしたのは、小さな公園だった
小さいながらも一通りの遊具が揃っていて、中には小さい子供が何人か遊んでいる
「ったく、ちゃんと待って…」
銀時が最後まで言い終わる前に、神楽は楽しげにブランコ目掛けて走って行ってしまった
「アイツ…本当に連れてきて正解だったのか?」
自分の勘には自信がある、そのつもりだったのだが
今回ばかりは失敗したかもしれないと銀時は溜め息をついた