壊れた世界、希望の国

□第三章
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「ただいま、戻りました〜」





緊張感のない間延びした声が、室内に響く

高杉率いる鬼兵隊は、普段
幕府からの手が届かない空に身を潜めている
その為、今回地上に降りるのは久方ぶりであった
危険を冒してまで地上に来た理由

それは、ある計画の為だ


「へぇー!!意外と中は広いアルな」


銀時の横で、神楽は珍しそうに辺りをキョロキョロと見回していた
ふと高杉の視線が神楽に向けられる
高杉は窓辺に座り、外を眺めていた様であった
手にはまだ火が付いていない煙管を持っている


「オイ、銀時…その横に居る奴ァなんだ、何処でそんなガキこさえてきた」


銀時の隣に立っている少女を見ると、右目を細めた


「はぁ?冗談よせよ、俺の隠し子に見えるか?こんなガキが」


「だから、ガキじゃないアル!!神楽ネ!!」







怒る神楽を尻目に、銀時はスタスタと高杉の前まで歩いて行くと、無言で手を合わせ、頭を下げる


「…どういうつもりだ、銀時」


「あいつ、夜兎族なんだ」


銀時はチラリと顔色を窺うように、高杉を見た


「…夜兎?」


高杉はしばし、考える素振りを見せ
あぁと小さく呟いた
実際に目にするのは始めてだが、夜兎族の話は聞いたことがある

宇宙最強の戦闘種族

なるほど、何か使い道があるかもしれないと、高杉は考えた
銀時とて何も考えずに、こんな小娘を連れてはこないだろう


「な?何かしらに使えんだろ」


小声で耳打ちする銀時
やはりそうかと、高杉はニヤリと笑った








「…で?テメーのその血痕はなんだ、飯食うだけじゃなかったのか」


高杉の視線が、銀時の着物に向けられる
別れた時は、確かに白く綺麗だった着物は、今では見事に赤い花を咲かせていた


「…あぁ!!コレぇ?いやぁ…それがさ、そのーあれだ!!なんか事件に巻き込まれちゃって、と言うか、巻き込んじゃって?」


高杉は、全て見通した様に銀時を睨み付け


「騒ぎ起こして、嗅ぎ付けられたらどうすんだ」


煙管に火をつけた
もう嗅ぎ付かれてると思うが、と高杉の心の声が聞こえてきた銀時は申し訳なさそうにヘラヘラ笑う


「大丈夫だって!!ちゃんと全員、殺ってきたし」


「…」


高杉は無言で煙管をふかした、それは大きな溜め息ともとれる









「銀ちゃん、あの片目野郎、誰アル?」


「……俺の仲間の高杉だ、鬼兵隊の首領…まぁアレだ、ここで一番偉いやつ」


「ふぅん」


神楽は銀時とこの男の関係が少し気になったが、いずれ分かることだろうと
開きかけた口を閉じた













「…と、いうわけで俺はシャワー浴びてくっから」

これ以上、ここに居ても高杉に何を言われるか分からない
自身に付いていた血を早く流したかったのもあるが、銀時は半ば逃げるようにサッと背中を見せる


「いってらっしゃいヨー、銀ちゃん、じゃあ…私はこの中をいろいろ探険してくるアル」


「探険?…いいけど、あんま騒ぐなよ?」


神楽はハーイと手を挙げ、目を輝かせていた
















「あれ?…戻って来てたんスね」



「あぁ…また子ちゃん、洗濯よろしく」と
銀時は入れ替わりで部屋に入って来たまた子の肩をポンと叩き、すれ違い様に呟く
フワリと血の匂いが、銀時の後を追いかけていった




「え…え!?血液落とすの大変なんスよ!!…ちょっと!!晋助様も何とか言って下さいよ!!」



高杉は、何も答えずに鼻で笑うと
再び外に視線を向け、煙管を楽しみ始めた







 
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