何れ、壊れる
□まどう
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「いやァ、見事な演技でしたねィ。土方さん」
「は?」
子供二人を追い出して、やれやれと伸びをした沖田からの言葉であった。唇が薄らと笑みを作っている。
「アンタ、本当は旦那を犯人だって思ってないんでしょう?なのに、あの演技。こりゃさっさと真選組やめて、どっかの劇団でも入った方がいいですぜ。っつーわけで、さよならでさァ土方さん」
「なんでそうなるんだよ!」
とか言いつつも、図星だったもんで一言しか返すことが出来なかった。
劇団に入るつもりは毛頭ないが、本心は上手く押し殺していた筈。それを見抜くとは、やはり沖田とは長い付き合いである。しかし、
「……総悟、てめーもだろ」
付き合いが長いからこそ、互いに胸の内が分かってしまうのだ。沖田はどこ吹く風で頭の後ろで手を組んでいたが、その姿が拒絶を意味しているようで僅かに面白い。
泣く子も黙ると恐れられている真選組。一つの組織に所属し、それも隊を纏める立場にある者が私情を持ち込むなど、あまりに愚かであると思った。自分も、沖田も。
「アイツ等の話を聞いた限りじゃ、万事屋が下手人だということしか考えられなくなっちまったな」
「『あの』旦那がねェ」
「ほら突っ立ってないで。早くしてくれないかい」
言葉とは裏腹に、二人に落ち着いた声色をふっかけたのはお登勢だった。
「こっちは店の準備もあるんだよ。銀時の奴が何をやらかしたか知らないが、貴重な時間割いてやってんだ。呆けてないでさっさと仕事しな」
「そりゃ大変申し訳ないがな、家宅捜索ってのは家主が立ち会ってくれなきゃ出来ないもんでね」
「なら、銀時本人でも引っ張ってくればいいだろうよ」
「それが出来たら一番なんだがな」
お登勢は見せ付けるように嫌な顔を作り、腕を組むとソファに座った。
開けられた玄関の戸からは、お登勢の後に続いて他の隊士も入ってくる。一様に土方に軽く挨拶をしてから、そそくさと仕事に移っていった。
対して沖田は、冷蔵庫を漁るとアイスキャンディーを持ち出してお登勢の向かいに腰を下ろす。
「ほらー。てめーら、しっかり働けよー」
「てめーがな!!」
どこからどう見ても仕事をしているように見えない沖田へ、土方が吠える。
「何言ってんですかィ。冷蔵庫の中身を調べることも、家宅捜索のうちでさァ」と、当たり前のようにぺりぺりと袋を破ってアイスを口に含む姿に、土方の眉間のシワが増えた。
「テメェの頭をたたっ斬って、脳内家宅捜索してやろうか!!座ってんじゃねぇ!!さっさと散れ!!」