空を仰ぐ

□第十二章『地球上で平等なのは時間だけ』
1ページ/5ページ






暗がりから
笑っているお前を見るのが
辛かった。

でも、そんなこと言えるわけねぇだろ?

だから
お前の前で、俺はいつも笑うんだ。
たとえ、
狂ってると言われても

顔に色を塗り重ねて。



















カンカンカンカン…
屯所内に非常用のサイレンと鐘が鳴り響く。
廊下ではバタバタと忙しなく隊士達が行き交っていた。

屯所の庭の中央には銀時。と対峙する桂、坂本。その後ろには神楽と新八。
その周囲を屯所に残っていた真選組隊士が囲う。
多勢に無勢。
逃げ場はなく一対多数にもかかわらず、銀時は眼光を鋭くしたまま、口元には笑みを浮かべていた。

「白夜叉。貴様は銀時の体から出ていく気はないのか」
「ない、ね。……つーか何、その言い方?なんだか今なら見逃してやってもいい、みたいに聞こえんだけど」
「……」
「テメェ等より俺の方が力が上だってこと、忘れてねェ?」
「貴様こそ、武器もないのにどう戦うというのだ」
「あぁ。そういや、そーだな」

丸腰の状態であることを気にしていないのか、余裕を崩すことをしない銀時。
白夜叉に真剣を持たせてしまっては、一層危険度が増してしまい、それこそ鬼に金棒だ。
今の内に、なんとか叩いておきたいところなのだが。その思惑は呆気なく崩れ去ってしまった。




「でも俺には足がある」
「…!!」

ダン、と地を蹴り。狩りを行う獣のように、獲物に食らい付こうと駆けた銀時。
もちろん。獲物は桂だ。
いや、桂の腰に差している真剣と言った方がいいのかもしれない。

「使えねェ刀なんざ持っていても『丸腰』なのはテメェも同じだろうよ、桂」
「しまっ…」

刀を守ろうと手錠によって自由が効かなくなった両手を腰にまわすが、「これ。借りるわ」と、耳元で囁かれて。
すでにそこにあるはずの刀はなくなり、哀しくも指は帯しか掴むことが出来なかった。











「くそっ!!この手錠さえ外せれば…」

舌打ちをする桂に対し。
銀時は今しがた手に入れた刀を、鞘から抜き、満足気に鞘をクルクルと弄び始める。

桂は坂本に手錠を外せないか、と頼んでみるが。
「…こりゃ無理ぜよ。完全に接着剤が穴を塞いじょる」
「どうにかならんのか!!真選組め…接着剤など付けおって!」
という始末である。


桂と坂本の会話を横目に、新八と神楽は揃って神妙な顔をしていた。
今、爛々と目を光らせ刀を持ち、目の前に立っている人物は自分達の知っている人物ではない。
だが、あの男と同じ出で立ち、同じ声、同じ姿。ということに戸惑ってしまう。
相手は本気で殺しに来ているというのに、反撃することも出来ずに自分の身を守るのが精一杯なのだ。
視覚と想いが邪魔をして、二人の身体はなかなか思うように動いてくれなかった。


銀時に殺される――


そんな信じられない、信じたくない出来事に、思考がついていかないのだ。

「テメェ等。俺の身なりが『銀時』だから、好き勝手できねーんだろ?」
「…え」
「じゃ、テメェから相手してやる」

二人の心を見透かすように。
銀時は鞘を放り投げると、殺気を増幅させ瞳を見開いた。


まずは。神楽がターゲットだ。






 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ