空を仰ぐ
□第九章『いつも自分の為に誰かがいる』
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「うーん、目が覚めないのう」
攘夷党隠れ家に、とりあえずで戻ってきた面々。
警察から逃げるように身を隠しつつ、辿り着いたのは一刻程前。
相変わらず銀時はスヤスヤ眠っており、目を覚ます気配は微塵もない。
自由に動ける、坂本と新八は食糧を調達。桂と神楽は身を休めつつ銀時の『監視』。
もちろん、そのまま銀時を転がしておくわけにもいかず
坂本と新八が持ってきた縄で、両手足は縛ってある。
少し可哀想な気もするが。
「これで一先ず、安心じゃのう」
「そうだな…」
「少しばかり疲れたやき、わしらも休むぜよ!!」
坂本は大きく伸びをし、胡座をかいて座る。
大人三人に子供二人。六畳間の部屋では居心地も良くなく、狭く感じた。
「このまま時間が過ぎればいいですね…」
「だな。まぁ…三日間が過ぎ、銀時の体から薬が抜けたとしても。白夜叉の存在を消さなければ意味がないが」
「……たしかに」
暗い影を落とす新八に、唸り声をあげ腕を組む桂。
「君達に出会ってからは、奴は出てきて居ない。ならば、存在を消さずとも大丈夫な気も…」
「……」
チラッと横目で新八を見れば、物憂げに顔を伏せている。
「…新八くん。こればっかりは、銀時自身の問題なのだから仕方ない。我々がどうこうして白夜叉の存在が消えるわけではないからな」
「そうなんですけど…ね」
なんだか部屋が一気に重い空気へと変わってしまった。
坂本はもっさり頭をボリボリかいて、あはは!と笑い、そんな空気を吹っ飛ばす。
「まったく。高杉は黒い獣だぁ、金時は白夜叉だぁ。なんちゅうもんを持ってるんじゃ」
「坂本。お前まで『わしの中には何か居る』なんぞ、中二的な発言はやめてくれよ」
「あははは!!わしゃ大丈夫じゃき」
坂本は何も考えていないようで、空気が読める男である。
桂は感心する。長い付き合いの中で、どれだけこの男に救われたことか。
「今はいろいろ考えたって仕方ないぜよ!!わしらにゃどうしようも出来ん、とりあえず明日が無事に過ぎてくれれば…考えるのはそれからぜよ」
「…そうですね」
「今を生きろ!アルな!!」
「神楽ちゃん。それ何処かで聞いたことあるから」
ひょっこりと新八の顔を覗く神楽。
こうしている間にも体の調子が良くなっているらしい。
空気が和んだところで、今日は少し休むことにした。
不安なこともあったが、昨日からの騒ぎで心身ともに疲れきっていたから。
銀時の体がピクリと動いたのも気が付かなかった。