空を仰ぐ

□第六章『空を仰ぐ』
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新八は一人、町を歩いていた。
これから神楽の入院している病院へと見舞いに行くのだ。
手にはビニール袋。その中身は、神楽の好きな巣昆布やらお菓子やらが沢山詰まっている。

あれだけの怪我を受けたら普通、手術後何日間かは寝たきりの様なものだが。
神楽の場合は、持ち前の回復力ですぐに目を覚ますかもしれない。
そして、起きるなり「何か食わせろ」と言いかねないのだ。
故に新八は今、こうして食料を手に病院へと向かっている。





攘夷党の隠れ家にて、新八達はこの先どうしたら良いのかを話し合った。
阿伏兎によると、薬の効果は三日間。
敵の情報だけに疑わしい気もするが、今は薬について何も分かっていない為に、この情報を信じざるを得ない。

三日間というのは、こちらにとってはありがたいことである。
期限つきならば、そのまま放っておけば銀時は元に戻るということなのだから。
だが、その間白夜叉が大人しくしているわけもなく。
身体を自分のものにする為、銀時の精神を壊し、心を揺さぶってくるだろう、と桂は言った。

「つまり、銀さんが出てこようと思わなければ…白夜叉はこれからも自分が体を使えるから、か」

精神の崩壊。それは銀時が一番辛くて、悲しがること。

「それって、僕達を殺すってこと…になるんだよなぁ…たぶん」

自惚れとか、そんなものではなく、銀時にとって誰かを失うことは精神的にかなりのダメージを与えることになる。
それも、白夜叉(自分)の手なら尚更だ。



その白夜叉の存在。
長いこと銀時とは一緒にいるのだが、神楽と新八にとっては初耳だった。
銀時はあまり過去の話をしない。
それ故、新八や神楽も聞こうとはしなかったのだが。
いくら一緒に居ても、過去のことを知る権利なんてものはないし、親しき仲にも礼儀ありなんて言葉もある。
ただその反面、ちょっと水臭い様な気もする。



当たり前の毎日。
ずっと続くと思っていた日々。
また、戻ることが出来るのだろうか?不安になってしまう。

「…だめ駄目っ!!マイナスに考えちゃ!!」

パンパンッと自分の頬を叩き、気合いを入れる新八。
空を仰ぐと、足早に病院へと向かった。






 
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