空を仰ぐ
□第四章『世間話もほどほどに』
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攘夷党アジト
「俺達を招き入れるなんて、随分と度胸があるじゃねーか」
土方と沖田は部屋に上がるなり、そこに居た男達を睨み付ける。
攘夷党の面々は、驚きを隠せない様子で。
敵をアジトに通すなど、何事かと党首を見やるも、肝心の党首は何も言わずに腰を下ろすだけである。
他の者もそれに続き、桂の隣に新八。
向い合わせで土方、沖田と畳に腰を下ろした。
新八は万事屋を出て以降、一言も口を聞かなかった。
目の前で銀時が神楽を刺したのだ、相当ショックだったのだろう。無理もない。
「新八くん、リーダーのことなら大丈夫だ」
「…はい」
「今、エリザベズが病院に連れていっている。心配なのは分かるが、これから更に被害を拡大させない為にも気をしっかり持たないとな」
「…わかりました」
そんな新八を気遣う様に、桂は優しく微笑んでみせた。
本来ならば、自分も神楽のことが心配であったし、病院について行きたかったのだが。
事は急を要する。
何せ、再び白夜叉が現れたのだ。
あの男の恐ろしさを、ここにいる彼等は知らない。
「ここまで来れば、しばらくは安全だろう」
「…俺達にそのまま連行されなきゃな」
「何!?貴様等まだそんなことを考えているのか!!」
「あの、桂さん…すでに手錠かけられてますよ」
「ぬぉっ!!いつの間に!!」
新八は桂の手を取り、手錠を見せた。
こんなもの付いてりゃ、気が付かないわけがないのに。
この人は…、と新八は呆れた顔でその手を放した。
「…おい桂、単刀直入に聞くが、テメェは何か知っているような素振りだったな。春雨の新薬について情報を持っているのか」
桂の向かいに胡座をかき、腰を下ろした土方がズイッと体を前に出す。
「春雨?何を言っている。俺は春雨など浮わついたものよりも蕎麦の方が好きなんだが」
「そっちの春雨じゃねーよ!!なんで今、その話をしなきゃなんねぇんだ!!」
「貴様が春雨と言ったのだろう!」
「違う!!俺が言ったのは、宇宙海賊の春雨だ!!」
「宇宙海賊?」
桂は視線を泳がせ、唸り声をあげる。
もちろん桂も、宇宙海賊春雨のことは知っていた。
だが何故、今。彼等の話を持ち出してくるのかが分からなかったのだ。
何か知っていることと言えば、桂が万事屋に行った時、そこに居たのは銀時ではなく、久しぶりに会ったアイツのことくらい。
――確かに白夜叉のことなら、知っていることはあるが
だが、この二人が欲しいのは春雨に関しての情報らしく。
どうにも話がすれ違ってしまう。
「土方さん。こりゃ本当に何も知らないみたいですぜィ」
「んなわけねェだろ」
「俺ァ、コイツが言ってた白夜叉ってのが気になりまさァ」
「別に気にすることねーだろ。白夜叉ってのはアイツのことだろうよ。薬を飲んで万事屋は豹変しちまったんだ。その万事屋が…」
「ちょっと待て。どういうことだそれは」
「…は?」