アビス

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グランコクマに着くと、ガイがフィオナの腕を引く。


『ガイ!?』

「皆には許可取ってある。・・・折角二人でグランコクマに来れたんだ。少しは二人の時間も過ごさないか?」

『え?それって・・・』

「俺とフィーの初デートだ。まずは腹ごしらえだな。ジェイドに聞いたんだよ、酒屋のカレーがウマイって!」


無邪気に笑うガイに腕を引かれるがまま、昼間にも関わらず酒場に入っていく。
ガイがジェイドの名前を出すと、マスターがカレーを用意してくれた。
温かいご飯が直ぐに運ばれてきて、口に含む。


『・・・おいしい!』

「ああ、これは本当に美味いな。」


スパイスの味がよく効いていて、辛味の中に甘さもあって。
じっくり煮込まれたのが分かる位、とても美味しい。


『本当。大佐こういう味が好きなんだ。皆でも食べに来たいわね!』

「・・・ようやく笑ってくれたな。」

『え?』

「・・・いや、何でもないんだ。食べたら、そうだな・・・ちょっと街を歩かないか?」

『うん、ありがとう。ガイ。』


ガイや仲間達の優しさには気付いていた。
きっとこのデートは私への気遣いだ。

ただただ頭の中ではリクの声が響いていた。
其の所為で役に立っていないことは重々理解していたが、どうしても切り替えられないでいた。

食事の後、ガイと来たのは集合商店だった。


『あ、グミ買い足さないとね。』

「おいおい。こんな時にまで旅の心配かい?」

『ふふ・・・クセ付いちゃった。』

「おや。そこのお嬢さん。良かったら宝石でも見ていかないかい?」

『宝石?』

「良いじゃないか。見てみようぜ。」


商人に誘われるがまま、宝石を見る。
普段は武具や防具等の装備品しか見ない為、何だか新鮮だった。
ネックレスやリング、ブレスレット等様々なものがあり、思わず目移りしてしまう。


「お兄さん、彼氏かい?」

「あ、はい・・・」


其の質問に恥ずかしくなり、頬を真っ赤に染める。
其れはフィオナだけでなく、ガイも一緒だった。
答えたガイの顔は見えなかったが、耳は赤く染まっていた。


「可愛い彼女に何かプレゼントしてやりなよ。俺のオススメはこれだね。最近入手したシェリダンの職人特製のネックレスだ!」

『わ・・・可愛い・・・』

「かなり丈夫に作られてるから、旅でもオススメだぜ。」


シンプルなデザインで、これくらいなら着けても目立ちはしなさそうだ。
それに何よりこういったアクセサリーの類は慣れていない為、この位で丁度良い。
円形のシンプルなモチーフにはダイヤがはめ込まれていて、上品さも感じる。


『この間ドレス着た時にこれを付けていたら、また違ったかもね。』

「はは・・・そうかもな。でもあの時はあの時で充分綺麗だったさ。」
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