るろうに剣心

□6
1ページ/12ページ


「いい仕事したぜ。お前の炸裂弾」
「そうか」

蝉の鳴く真夏の昼――
その日、左之助は月岡の元を訪れていた

「お前には感謝してるぜ。借りてた金もそのうち――「左之」

先ほどからペラペラと言葉を続ける左之助に、月岡は痺れを切らすように切り出す

「…本当は何を言いに来た?」
「………」

ため息混じりの月岡の問いに、左之助はチッと舌打ちをする。

「…なんでもお見通しってか?」
「………」
「……陽向と、恋仲になった」
「…やっとか」
「は?」
「二人とも鈍いんだよ、こうゆうことに関しちゃぁ」

月岡は呆れながら言った。

「克…」
「幸せにしてやれ」
「…ああ」

ニッといつものように笑い合い、互いの拳を軽くぶつけて外へ出た。

「ん?」

少し歩いたところで、左之助の目に茶色く大きな生き物が横たわっている姿が映り、慌てて駆け寄った。

「なんだこりゃ、犬にしちゃデカすぎるけど…やっぱ犬か…?」

ツンツンとその体を突っついてみる。

「おい、どうした犬の仏さん!」

死んでるのか…?

そう思い顔を近付けると、そいつは体を起こし、しっぽを振りながら左之助の顔に舐めついた。

「なんでぇ、生きてんのかよ!びっくりさせんな!」

そして帰ろうとする左之助の足にしがみついて離れない。

「おい、なんだよ!俺にどうせってんだよ!離せ!!」

その大きな体を引きずって歩くが、うまく歩くことはできず、左之助の方が先に転んでしまった―…



一方、神谷道場――



『暑っ〜い!』
「…おい、んなだらしねぇ格好してんじゃねーよ!」
『弥彦は元気ね〜』

薄い夏物の着物を着ただけの千鶴は、縁側に座って脚を伸ばし、襟元を緩めてそこにうちわで風を送っていた。
そんな姿に、庭で竹刀を振るう弥彦は堪らず指摘する。

「おい!」
『?』

門の方から聞こえた声に、茶の間で休んでいた剣心、薫もそちらに目をやる。

「どーにかしてくれよ、こいつ…」

現れたのは、大きな茶色い犬を背中に背負った左之助。

『犬?!どーしたの、一体』
「ずいぶん大きいわね!」
「ほ〜、知らなかったでござるな、左之に犬の友達がいたとは」

一同は見慣れない客に、身を乗り出す。

「友達じゃねぇよ」
「どう見ても犬を可愛がるような男には見えないけど…」
「可愛がってねぇって!」
「人は見かけによらねぇんだな」
「だからよ、俺も好きでこんなことやってんじゃ…」
「とにかく奥へ運ぶでござるよ」
「ったく、重てぇんだからよぉ…」

文句を言いながら左之助も犬を背負ったまま中へ足を運んだ。


『なんだ、左之の友達じゃないの?』
「ったりめぇだろ。成り行きでこうなっちまっただけだ」
『相当水を飲んでたよ?暑さでバテてたのかな?』

元気を取り戻した犬の頭を撫でながら陽向は左之助に向かって喋る。

『だけどこの子、可愛い〜!』

陽向はニコニコしながらよしよし、と犬を撫で続ける。

「…あう?」

犬は気を良くしたようにしっぽを振ると、お返しをするように陽向の頬を舐め回す

『わっ、なに?』

飛び付くように前足を陽向の体へやると、あっという間に体は後ろへ倒れ、犬はそのまま上から陽向の体を舐め回した。

『くすぐったい!』
「…………」
『あははっ、コラッ…もぉ〜〜』
「…………」

陽向を押し倒すその姿に、皆は苦笑する

「ほら…やっぱり左之助そっくりなんだから」
「…っ、どういう意味でぇ!」

薫の言葉にハッとして犬を陽向の上から退けさせようと引っ張る。

「おい!そこは俺専用の場所なんだよ!!降りやがれ!」

しかし、強い力で引っ張っても離れようとしない。

「…―〜〜こんのっっ」

「よっぽど陽向さんのこと気に入っちゃったみたいね」
「ああ、人になついてるところを見ると、野良ではなさそうでござるな」
「飼い主がいるなら、心配してるかもしれないわね」

剣心と薫は、その姿を見つめながら会話する。
そして、飼い主を探すために似顔絵を描いて、町に張り出すことにした。

『ねぇ、この子名前なんて言うの?』


体を起こし、左之助に向かって問う。

「あ?そうだな…でっけぇ図体で、ノタノタしてるから…ノ太郎でどうだ?」
「ノ太郎?…変な名前だなぁ」
『いいじゃない。呼ぶときは左ノ太郎で一片に済むし!』

陽向は気に入ったようにさっそくノ太郎〜と名前を呼んで可愛がった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ