るろうに剣心

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神谷道場での暮らしにもだいぶ慣れてきた頃。

「…飯、これだけか?」

お腹を空かせた左之助は、いつものように神谷道場へ昼飯を頂きに来ていた。

「薫〜これだけじゃ育ち盛りの俺の腹は満足しねぇよ!」

ちゃぶ台を囲むそれぞれの前に並べられたのは、大人の男なら一口で食べれてしまいそうな量の白米‥のみ。

「仕方ないでしょ、うちはお金を入れない居候が多くて大変なんだから!」

その言葉に陽向と剣心は顔を見合わせて苦笑いした。

「さ、よく噛んで食べればお腹いっぱいになるわよ」
「「え〜〜〜」」
「なんかあるだろ?なんか‥」
「これじゃ足りねぇよ〜」

左之助と弥彦はまだ文句を言っていた

「嫌なら自分達でなんとかしてみなさいっ!!」
「や、弥彦!よく噛んで食うんだぞ」
「お、おう!」

しかし薫が鬼のような表情になったので、二人は、大人しく与えられた分を食べ始めた。

「…はぁ〜、参ったぜ」

昼食を済ませ、縁側に横たわる左之助。
お腹からぐぅ〜っと虫の鳴く音がする。

『‥ぅーん…なんとかできたらいいんだけど』
「やっぱりここは博打で一儲けするしかねぇか…」

左之助は体を起こし、あぐらをかいてポンっと手を叩いた。

『そんなの宛にならないでしょ〜』
「…なんでも、前に蔵ん中から出てきた水墨画を売ったとかなんとか…」

左之助がポツリと呟いた。

『それよ!!』
「あ?」

しかし陽向は予想以上に食い付いてきた


『蔵の中からお金になりそうなもの探して売ってくれば美味しい牛鍋が食べられるわよ!!』
「…でも、勝手にそんなことして良いのか‥?」
『大丈夫よ!たぶん』

明らかにわくわくと楽しそうな顔をしている陽向

『あたし、こうゆうのは得意だから!』

片目を閉じて自信満々にこちらを見ている姿に、やれやれと腰を上げて蔵へ向かう

ギィィ…

重たい扉を開けて中へ入る

『うわぁ…すごい…』

初めて入るその中は、ごちゃごちゃと乱雑に物が散らかっていた。

「…こりゃぁ大変そうだな‥;」

辺りを見渡しながら奥へと進み、これはなんだ、あれはこうだと物色を始める二人

「ちょっと誰ー?蔵の扉開けっ放しにしてるの!」
「!!」

間もなくのことだった。蔵の外から聞こえた薫の怒鳴り声。

『隠れてっ!』

二人は身を屈めて息を殺した

「誰かいるのー?」

薫が入口から中を覗いている。陽向は堅く目を瞑り一層密着した。

「弥彦ね、こんなことするのは‥!」

バタンと扉が閉まる音がし、薫の声が遠くなっていった。

『行ったみたい…』

ふぅと胸を撫で下ろし、左之助を探すように顔を上げた。

『…ぁ////』

しかし探すまでもなく、すぐに左之助と目が合った。
その距離、およそ拳ひとつ分。
陽向が壁だと思い、身を寄せていたのは左之助の胸板だった。
自分にしっかりしがみついている形に、左之助はおそらくずっと陽向を見ていたのだろう。
左之助の方が先に少し頬を赤らめていた気がする。

『////』

陽向はさっと体を離した。

『扉が閉まったら、真っ暗で何も見えないから…何か灯りを探さないと‥』

手探り状態で近くを這いずる陽向

「灯り…ねぇ」

左之助もガサガサと動き回る音だけが陽向の耳に届く。

『…一回、出よっか』
「そうだな」
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