3部

□午後4時30分
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「えー、振られたなんてありえない!!」

「JOJOもどうかしてるわー!!」


今日もクラスのギラギラしてる女子が騒いでいる。
ん?誰が告白されたって?
承太郎だって?今週入って何回目ですか。

半分あきれ気味で耳を傾けてみると、次に聞こえてきたのは聞きなれたあの言葉。


「「「ななしのどこがいいのかわかんなーい!!」」」


私がため息をついていると、友達達に笑いながら「ななしどんまい」と声をかけられ、クラスの男子達にはお前も大変だなぁ、と肩を叩かれる。

私は友達に恵まれたな、としみじみ思う。みんなのお陰で学校も楽しく過ごせてるけど、何げにこれ、気にするんだ。



たぶん承太郎が私と付き合ってるのは、私が幼なじみで女よけにもってこいだからだと思う。
だからこのことについて何と言われても、言い返す気もないし、言い返すこともできない。

でもそれに気付いてても私が承太郎と別れたくないのは、私の方は本気で承太郎が好きだから。
どんな形であれ好きな人の傍にいたいって思うのは、私だけじゃあないはず。


友達が隣でがぎゃあきゃあ騒いでいるなかで、頬杖をついてぼーと時計を眺めていると、針があの時間を指し示していた。




「帰るぞ。」

承太郎はいつも決まった時間に毎日、教科書一冊も入ってないだろうってくらい薄っぺらなカバンを肩に担いで私を迎えに来る。


別に女よけで付き合ってるなら、律儀に毎日来なくていいのに。

思ってるけど、口には出さない。


「お熱いねー!!ごゆっくりー。」友達には私が女よけだって言ってないから、いらない気を使ってくれる。

私は苦笑いで『バイバイ』とさよならを伝えると、先に行っていた承太郎を少し走りながら追い掛けた。




いつも私は承太郎の少し後ろをついていく。隣に並ぶなんて、私には贅沢すぎる。
誰よりも大きな背中を見てると、やっぱり自分は承太郎が好きだなぁって改めて実感する。




ずっと承太郎をみつめていると、ななしがいつの間にか車道の方へ反れていき、その横から車が来ていた。
それに気付かずにななしはただぼーっとその後をついていた。

後ろから近づく車の音で承太郎がふと後ろを振り返ると、ななしと目が合うと同時に後ろの車の存在に気付いた。慌てて承太郎は車のクラクションが鳴るのと同時にななしの腕を強く引いた。
承太郎の馬鹿力によってななしが事故にあうことは免れたが、その勢いで承太郎の胸に飛び込んだ。


「危ねぇじゃねぇか。」

『あっ!!ごっ、ごめん……。』

「ちゃんと前見て歩け。」

『うん…。』


会話といっても、こんな素っ気ないものばかりだった。2人が付き合う前はもっと会話が弾んで、仲良さげだったが、付き合ってからは何となく2人を取り巻く雰囲気が変わっていた。



ななしは急いで承太郎から離れると、また初めのように承太郎の後ろを歩く。すると、承太郎が急に振り返った。



「てめぇ、なんか勘違いしてねぇか?」

『勘違いって何が?』

「おれがお前と付き合ってんのは、おれの女よけだからだとか思ってんじゃねぇのか?」

『えっ、そうなんでしょ?』

思わず口が滑ったななしは慌てて自分の口を手で隠すと、承太郎はあからさまにため息をつきななしの目を真っ直ぐ見つめた。



「おれがどうでもいい女を近くに置いとくかよ…。おれはお前が好きだから、傍にいてほしいんだ。」

『え……何、突然。承太郎がそんなこと言うなんて…。嘘でしょ。』

「嘘なんか言ってねぇよ。…だから、ほらこっち来い。」


そう言って手を差し伸べて来る承太郎。ななしは一瞬ためらうものの承太郎に置いてくぞ、と声をかけられると、恐る恐るその大きな手に手を伸ばした。

触れるだけだった手は承太郎の力によって強く繋がれ、それと同時にななしの顔が真っ赤になった。



「いらん心配なんぞせんでいい。おれがお前を好きなんだから、もっと自信持て。」


その言葉で真っ赤なななしの顔は笑顔になり、私も承太郎が好きと応えた。





『承太郎、歩くの早くない?』

「てめぇの足が短けぇんだろ。」







 

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