3部

□お望み通り
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承太郎とななしは幼なじみ兼恋人だ。つい最近幼なじみから恋人とという関係へ発展した二人だが、これといって二人にあまり変化は見られなかった。

幼なじみとしては公認されているななしだが、誰一人として2人の関係の変化にきずく者はいなかった。

だから、承太郎のトリマキの女子達は減る訳もなく、むしろ日に日に増えている勢いだった。
当然ななしはこのことに不満があったが、自分が承太郎の彼女だと公言する度胸はなかった。


『承太郎、もっと恋人らしいことがしたいんだけど。』

「何を言いだす、このアマ…。」

『このアマって…。まぁまずはあのトリマキの女子をなんとかしてよ。』

「追い払っても、ついてくるあいつらが悪いんだろう。」

『とかいって本当は嬉しいんじゃないの!?』

「あぁ?」

『うっとおしいとか言ってるわりには、いつも一緒にいるじゃん。やっぱり承太郎とて男の子だもんね、女の子に囲まれて悪い気しないか。』

「いい加減なこと言ってんなよ。」

『私は見たことをそのまま話してるだけだから。』

「これ以上言ったらぶっ殺すぞ。」

『彼女にそんな野蛮なこと言う?まぁ私はどっちかっていったら、承太郎みたいな奴よか、花京院みたいなフェミニストのが好きだけどね。』

「ならおれじゃなくて花京院のところ行きやがれッ!」

『承太郎の老け顔!』

「てめぇ…ッ、…もう俺に話しかけるんじゃねぇ。おまえの顔見るだけで胸くそ悪ィ。」

『こっちから願い下げだから、もう知らない!』


「あのくそアマ……ッ」

承太郎は走って立ち去っていったななしの後ろ姿を睨み付けながら、怒りを近くの校舎にぶつけた。きっとこの跡はずっと校舎に残り続けるだろう。




『花京院ッ!』

「なんだい。」

『承太郎ってば最低なんだよ。』

「承太郎と君の喧嘩に僕を巻き込まないでくれるかな。」

『いいじゃん。もう話しかけるなっだって、もう一生承太郎としゃべんない。』

「とか言ってそんなに続かないでしょ。」

『今回ばかりは本気だから!……承太郎と私だったら、私に味方してね、花京院。』

「いやぁスタープラチナで殺されかねないから、それは断言できないな。」

『薄情者ッ!』

苦笑いしながらも話を聞いてくれるよき友だ。花京院と付き合えたらどんなに楽だろうと思うけど、花京院は私を女として見れないらしい、なんて失礼な奴だ。





まさかここまで続くと思ってなかった。
正直1週間も待たずにあいつから話しかけてくるだろうと思っていたが、ななしと俺が一言も話さなくなって1ヶ月が経とうとしていた。
あいつも頑固な奴だ。

俺から話しかけようなんて気はまったくないがな。


それにしてもあいつは花京院といる時間が多くなった。花京院だけならまだしも、問題なのは花京院以外の他の男が軽々しくあいつに近づくようになったことだ。

ななしの奴本性はガサツで野蛮なくせに他の男にヘラヘラしやがって、気にくわねぇ。でも、あいつは俺と一緒にいる時は、笑ってるよりも怒ってるほうが多かった気がする。だからこんなに腹が立つのかもしれない。




「ずっと好きでした、付き合ってください!」

『えっ!そうだったの?』


これは間違いなくななしの声だ。あいつ告白なんかされているのか?

「いやぁななしさん、空条くんと仲良かったから近寄れなくて……。」

『あぁそっか。うんありがとう、告白してくれて嬉しいよ。』

待て、あいつ告白受けるつもりか!?話しかけるなとは言ったが、まだ別れたわけじゃあないぞ。
そう思ってたら俺の体は勝手に動いていた。





「おい、こいつは俺の女だ。他をあたれ。」

承太郎はそう言うとななしの腕を後ろから力強く引っ張った。
ななしに告白した男は承太郎の突然の登場に、真っ青になって逃げていった。


『ちょっと待ってよッ。……承太郎のせいで行っちゃったじゃん。』

「お前、あいつと付き合う気だったんじゃねぇだろうな。」

『……………承太郎には関係ないじゃん…。』

「どうなんだよ。」

『ッ…だって違う人と付き合えば承太郎のこと忘れられると思ったから…。私、承太郎に嫌われたから……。』


「……ったく、忘れる必要なんかねぇよ。」

承太郎はそういいながら、声を震わせながら俯くななしを自分の腕の中に閉じ込め、ななしの頭を胸に押し付けた。


「この前は俺が悪かった。俺は最初からお前しか見てねぇ、だからこれからも俺の傍にいてくれ。」

『承太郎から謝ることなんてあるんだね。』

「うるせぇ。」


承太郎から体を引き離され、見つめられたななしは、雰囲気的に承太郎との初めてのキスを期待してそっと目を閉じた。



ドキドキして承太郎の顔が近づく気配を感じていたら、唇に柔らかいい感触の代わりにゴンッと鈍い音が屋上に響いた。


『いってぇッ!何すんのさ!』

「頭突きに決まってんだろう。俺を怒らした罰だ。」

『雰囲気読め!……はぁ、期待して損した。』
 

ななしはそう言って、ニヤリと笑いながら至極嬉しそうな顔をした承太郎を睨みつけた。##NAMW1##は肩を落としながら屋上を後にしようと、屋上のドアの方へ向かっていった。

するとななしの腕がぐいっと後ろに引かれて、承太郎の唇とななしの唇が一瞬だけ触れ合った。驚きで目を見開くななしに承太郎は笑いながら言った。



「ほら、お望み通り。」






 

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