『花京院!』
「なんだい、うっとおしいな。」
『ちょっと承太郎の真似しないでよ!お前がやると気持ち悪いぞ。』
「まぁななしは、承太郎が大好きだもんね。」
『うん、大好き!ってそんなこと言うか。』
「もう言ってるじゃあないか。」
『きゃ!』
「おえっ、キモッ」
ななしは真顔で、ペシッと花京院の頭を叩いた。
「痛いじゃあないか。」
『お前が話を反らすからだろう。』
「あぁそうだった。っで、承太郎の好みだっけか?君と付き合っているんだから、ガサツで暴力的な子が好みなんじゃない?」
ななしはこれ以上話を反らさないためにも、湧き出る怒りをぐっと堪えて続けて答えた。
『でもさ、承太郎の好みのタイプって日本人女性みたいな、控えめな人って公式にも書いてあったじゃん?
それって私と正反対だよね!?』
「まぁそうだね。ミーハーの子達にもうっとおしいって連呼してるし。」
『これって前後のつじつまのあわないこと、すなわち矛盾っていうんじゃあないか!?』
「しゃべり方うざいから戻して。」
『あぁ、ごめん。つい熱がこもってしまった。とりあえず悩んでます。』
「本当に僕も君の告白を承太郎が受けた時はびっくりしたよ。」
するとななしの顔はいきなり暗くなり、下を向いてしまった。
『昨日だって、小さくてかわいい子に告白されてたしさ、別に私じゃなくてもいいじゃん…って。』
花京院は元気のなくなったななしの頭を優しく撫でながらこうい言った。
「じゃあ、君が承太郎の好みになるってのはどうだい?おしとやかで静かな女性に。」
するとななしは勢いよく頭を上げて、目を光らせて花京院を見た。
そうしてななしと花京院の秘密の計画が始まった。
「おいななし。購買いってくるが、なんかほしいもんあるか?」
『あーじゃあ焼きそばパ……』
その時花京院が机の下でななしの足を踏みつけた。
『いたッ!!……あっ、やっぱりなんでもないや、承太郎いってらっしゃい。』
「?まぁいいが。」
そういって承太郎は、ホリィさんお手製の弁当の他にパンも買いにいった。
「なぁ君はさっき決めたこと、もう忘れたのかい!?」
『ごめんごめん。うっかり。』
「しっかりしてくれよ、まったく。」
ななしがヘマをしそうになると、すかさず花京院がフォローするという絶妙なコンビネーションで数日間は作戦はうまいこと進んでいった。
しかし承太郎が2人の異変に気付かない訳はなかった。
「おい、てめぇら俺になんか隠してることないか?」
『べっ別に、隠してることなんてっないよ!』
「そうそう僕たちが承太郎にそんなことするわけないじゃあないか!」
明らかに承太郎は、怒っている。
付き合っている女と男が仲良くしていたら、承太郎だっていい気はしない。
「ななしちょっと来い。」
承太郎の凄みに何も言えず、後をだまってついていくななしの姿を花京院はニヤニヤしながら見ていた。
そう花京院は、ななしにこの作戦を提案したのはななしのためではなくて、ただ面白そうだったから。それだけ。
だからあからさまに承太郎が気付くように、大げさにしていた部分もある。
――奴は策士だった。
でも彼も2人にはうまくいってほしいので、
2人の距離を縮めるキューピット役をかってでていたのだ。