3部

□あなたのために
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『かきょーいーん、あーつーいー。アイス食べたいー。』

「ちょっと待ってね。このボス倒したらね。」

『それ1時間前にも言ってたよね?いつになったらボス倒せるんですかー?』

「ははッ!わかったよ、今取ってくるから待っててね。」

そういってゲームを一旦中断し、階段を降りてアイスをとりにいく花京院。
本当はななしは、ゲームばっかりいじっている花京院にかまってほしくて我が儘を言っていた。

実際花京院の部屋はクーラーがついていたため全く暑くなどなかった。



高校3年になってから転校してきた花京院は、あまりクラスに馴染めずにいた。
そこを偶然隣の席になったななしが話し掛けるようになり、仲良くなるにつれて2人は恋に落ちた。

告白は花京院から
「僕どうやらななしが好きみたいなんだ。僕たち付き合わないかい?」
何でもない昼休みの、不意打ちの一言だったが、ななしは一生この瞬間を忘れないだろう。


「オレンジジュースでよかったかな?」

『あっうん。ありがとう。』

オレンジジュースを飲みはじめるななしの横で花京院はポーズしていたゲームをセーブした。


『もういいの?ゲーム。』

「それ君が聞くのかい?僕にかまって欲しかったんだろ?」

『それはッ、違わないけど……。』


顔を真っ赤にして叫ぶななしに愛おしそうに微笑むと花京院はななしの肩を抱いて、優しくキスをし始めた。


初めは触れ合うようなキス、
回数を重ねるにつれて徐々に深くなってゆく。

『か…きょー、いん……。』

「ん。名前で読んでななし。」

『の、りあき…。典明、大好きだよ。』

その言葉を聞いた花京院はキスを止めるとななしを包み込むように抱き締め、ため息をつきながら

「このタイミングでそれは反則だろ。僕も大好きだよ、ななし。」

お互い顔を見合わせて、またどちらからともなく唇を重ねた。





次の日。
1時間目からまさかのテスト返しがあり、今日1日が嫌な気分で始まった。

『いや、いつも点数は悪いけど赤点はギリギリ避けてたわけ。でも今回ばかりはそうはいかなかったわ!最悪ー。』

「いい加減勉強しなよ!もう高3なんだから。」

『大学行ってもすることないし、なりたいものも見つかってないよ。私って今なんのために生きてんのさぁー!!暑いし、バカだし、暑いし。生きる目的が思い付かん!!』








「それじゃあ僕のために生きてよ。」



冗談で言ったつもりが隣に座る花京院がそんなことを突然言うもんだから、ななしは目を見開いて花京院の方を見る。

花京院は真剣な眼差しをななしに向けていた。時間が止まったみたいだった。


「なーんてね。」

そういっていつもみたいなななしをからかうような笑顔に戻った。

『冗談いわないでよ!』

「あはは、やっぱりななしは面白いや。」


再び元の雰囲気に戻るが、ななしにとってなんだかさっきの言葉が心につっかかっていた。




ある日。
承太郎に呼び出された。

「俺達がエジプト行ってる間に、ヒトデの特集番組があるんでな、録画を頼みたいんだが。
こんなことお前にしか頼めねぇ。」

『えぇ、まあいいけど。
ってエジプトってなんのこと?』

「お前、花京院からなんも聞いてねぇのか。」

『意味わかんないんだけど…。』

「詳しくは花京院から聞け。録画頼むな!」

『ちょっと待ってよッ!!』

承太郎はそういって質問に答えることなくさってしまった。



(エジプトってどうゆうこと!?あの2人なに考えてんのさ?)

『花京院ッ!!!』

「どうしたんだい?そんなに急いで。」

花京院はいつものように落ち着いた様子で返事をする。

『どうしたじゃない!!あんたエジプト行くんだって?』

「承太郎か…。黙ってるつもりだったのにな。」

『何にも言ってくんないなんて、ひどいじゃん!』

「君を心配させたくなかったんだ。それにななしに引き留められたら、僕の決心が鈍ってしまう…。」

ななしの花京院の制服を握る手が緩む。


『…なんでエジプトに行くの?』

「きっと君に言ってもわからないよ。」

『どれくらい向こうに行ってるの?』

「長くても50日くらいかな?」

『どうしても行かなきゃいけないの?』

「うん。僕はなにがなんでもエジプトに行くよ。」

『私も一緒に行っちゃダメ?寂しいじゃん……。』

花京院の制服の袖をぎゅっと握りしめるななし。


その手を握ってななしの手の甲にキスをして花京院は言った。

「危険な旅になるから、生きて帰れる保証はない。でも僕は君のために日本に帰ってくる。」

『絶対?約束だよ?』

「今生きて帰れる保証はないって言ったばかりじゃないか。」

花京院は薄く笑って言った。

『そこは、嘘でもうんって言ってよ……。』

花京院は泣き出すななしを無言で抱きしめ、軽くキスをした







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