最近は、ななしへの嫌がらせがエスカレートしていた。
朝は承太郎は遅刻してくるためななしとは一緒に登校しない。
この時を狙って、ななしの上履きがなくなっていて教室のごみ箱に捨ててあったり、
女子だけの体育では、わざとぶつかって転ばせたり、ボールをあてたり。
嫌がらせは承太郎が気付かないような陰湿なものになっていた。
ななし自身も承太郎に知られたくなくて、何もなかったかのようにいつも通り振る舞っていた。
しかし、花京院の目はごまかせていなかった。
それはななしのことをいつも見ていたから、花京院はななしのことがずっと好きだった。
親友の承太郎も大切だからこそ、自分は身を引くことにしたが、今のななしのこの状態に我慢ならなかったのだ。
そしてある日の昼休み、ななしが1人でトイレに行っていると突然頭上から水が降ってきた。
もちろん頭から爪先までびしょ濡れ。
ドアの向こうからは、甲高い笑い声や「ざまーみろ!」という暴言。
これまでの嫌がらせとレベルの違う今回のいじめによって、今まで我慢していたものが、どっと涙と共にあふれでた。
(これは、さすがにキツいかな……。)
女子達の声がしなくなると、ななしはトイレを飛び出し、びしょ濡れのままで屋上に走っていった。
その姿を花京院が偶然廊下で見かけたので、急いでななしを追い掛けた。
屋上に着くと、ちょうどななしに花京院が追い付いた。
「大丈夫かい!?何をされたんだ?びしょ濡れじゃないか!!」
『花京院……。あはは、見られちゃったね。こんな姿…。』
「まさか嫌がらせがこんなに露骨になるとは思わなかった。ごめん。助けてあげられなくって……!!」
そういって、花京院は濡れたななしの体を抱きしめた。
『濡れちゃうよっ!!離れた方がいいって!!』
「泣いてる君をほうってなんておけないよ。僕だったら、君にこんな思いさせない。」
『えっ……?』
「言ったら困らせるのはわかってるけど、もう我慢できない。
僕はななしのこと、ずっと好きだった。」
そういって花京院はななしの唇を奪った。ななしは必死で抵抗したが、花京院は離そうとしない。
そしていっそう悪いことに、その様子を屋上で居眠りをしていた承太郎が見ていた。
当然承太郎はすぐに、二人の元に向かい、二人を引き離すと花京院を力の限り殴った。
「てめぇ、人の女になにしやがる!!」
花京院は承太郎に一瞬驚くが、
すぐに目の色を変えて言い返した。
「承太郎が、ななしを守りきらないからこんな風になったんじゃないか!!なにを偉そうに。」
「ッ……!」
「しかも僕がななしを好きなこと承太郎、気付いてただろう?こんな隙だらけなら、僕奪っちゃうよ。」
この一言に承太郎は顔を歪ませると、
突然ななしの腕をつかみ力強く引っ張っていき、屋上を出ていった。
ななしはまだこの状況を飲み込めずに、ただ承太郎の後をついていくだけだった
承太郎とななしがやってきたのは、誰も使っていない開き教室だった。
もうすでにチャイムが鳴り授業が始まっているようなので、辺りはとても静かで、人気もなかった。
承太郎は教室に入ると勢いよくドアを閉めて、ななしを教卓の上に押し倒し激しいキスをした。
そして、ななしの息が荒くなってくると承太郎は唇をななしの首筋に沿わせた。
首筋にはたくさんの赤い鬱血痕が残され、
いつもとはあまりに違う承太郎の様子にななしは恐ろしさを感じた。
『ちょっと承太郎…!やめてよッ!!!』
ななしは抵抗して承太郎の胸を押すが、逆に両手を片手で拘束されてしまった。
承太郎はさらに行為を止めるどころか、その行為を進めていく。
『こんな承太郎…、怖いよ……。』
ついにななしは泣き出してしまった。
「ならこの俺の怒りどうすりゃいいんだよッ!!」
ななしはその迫力に何も言えなくなり、またも涙があふれ出た。
承太郎は、はっとしたようにななしの手首を拘束する手を緩めた。
「すまない。怒鳴るつもりはなかったんだ。」
これを聞いたななしは泣きながら、コクコクと大きく頷いた。
承太郎はたまらず、ななしを起き上がらせて抱き締めながらこう言った。
「お前がつらい時傍にいてやれなくて、気付いてたやれなくて本当にすまん。
花京院は気付いてて、気付けなかった自分に腹がたった。
しかも俺の知らない所で花京院がお前に触れていた所を見てかなり嫉妬した。
お前にあたって悪かった。
俺もガキだな。」
承太郎はさっきとは違う優しい声で話した。
『花京院には私からちゃんと話をする。
私はまた3人で楽しく過ごしたいよ。』
「あぁ。」
承太郎はそういってななしのあたまを撫でた。
───あぁ君はなんて残酷なんだ。
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