「なんでテメェはそんなにトロいんだよッ!!」
『ごめんね、ギアッチョ。』
「ホントどんくせぇのな、お前!!」
『ごめんね。これから気を付けるから。』
俺は仕事が終わるといつもこいつにあたり散らす。
暗殺チームと言えども、人を殺すことは胸くそ悪ぃ。だから俺は決まって仕事後は機嫌が悪くなる。
ただの八つ当たりだってななしは気付いているんだが、何も言わずに俺のぶっ壊した家具や食器やらを片付けていた。
少しは言い返せっては思うけどよ、あいつはいつも哀しそうな顔で「ごめんね」を繰り返す。
俺はまたその態度に腹が立つ。
ななしが俺に言い返さなくなったのは、最近のある出来事からだった。
俺が仕事から帰ってくると、いつもは俺とななししか、いや俺がいなければななししかいないはずのアパートから談笑する声が聞こえた。
「おい、帰ったぞ。」
『あっお帰りギアッチョ。』
「お帰りなさーい。」
そこにいたのはメローネだった。今日はオフだったらしくななしの所に遊びに来ていたらしい。
俺が仕事している間にななしが他の男と楽しく過ごしていたことにも苛立ったし、あいつが『メローネも一緒に夕飯食べていかない?』なんて言うもんだから、俺は堪忍袋の緒がキレた。
「ふざけんじゃねぇよ!!誰がこの変態とメシなんかくうかッ!!」
『ほらそんなに怒らないでよ。』
「いいじゃん別に、ギアッチョのケチー。」
メローネはそう言ってななしを後ろから抱き締めた。
ギアッチョはその瞬間ななしの腕を強く引っ張りメローネから引き離すと、メローネをすぐ様玄関に連れていき扉から追い払った。
「痛いなー、優しくしてよ。」
「気持ち悪ぃんだよテメェは!!」
「もっとななしと一緒にいたかったのにさ。」
「は?なにほざいてんだ?」
「……ホントななしって可愛いよね。………食べちゃいたいくらい。また君のいない時にお邪魔させてもらうよ…。」
メローネは立ち上がりながら服についた砂を払うと、そのままその場を去ってしまった。
ギアッチョは何とも言えない怒りをメローネがいなくなった今、ななしにしかぶつけることが出来なかった。
「おいッ!!なんであいつを家に入れたんだ!!」
『別にいいじゃない、メローネ面白いしお菓子作りだって手伝ってくれたのよ?』
「俺に口ごたえするんじゃねぇ!!俺以外の男を家にいれるな!!」
『何よそれ…。』
「お前メローネに愛想振りまいてたらしいじゃねぇか、この尻軽女めがッ!!」
『そんなことしてないわッ!!勘違いしてる、ギアッチョ。』
「黙れよ。お前の顔なんか見たくもねぇ!失せろ!」
ギアッチョはそう言うと、その場にあった目覚まし時計をななしに投げつけた。
運悪くそれはななしの米かみに直撃し、そこからは赤い血が流れ出た。
おでこに近い場所に当たったらしく、流れる血が止まらない。
『いった……。』
ギアッチョは少し威嚇のために投げつけた時計がまさかななしに当たると思っていなかったため、ななしから流れる血に動揺した。
しかし今さら引き下がれる訳もなかった。
「テメェがどんくせぇから当たるんだろ!?俺は悪くねぇからな!!血片付けておけよッ!!」
ギアッチョはそう言うと、部屋を出ていってしまった。
ななしは一人部屋に残されたまま、ただただ涙を流していた。
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