5部

□許可だけでも
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本当にあなたの目には僕は映っているのでしょうか?

僕は一生かかってもあの人には勝てないんだ。
今それを改めて実感した。




ななしはブチャラティのことをずっと好きだった。僕がチームに入るずっと前から。

なのにブチャラティはあの事件で死んでしまった、ななしが想いを伝える間もなく。

いつも一緒にいれば、ななしのブチャラティへの想いを知っていても、僕がななしのことを好きになるのは時間の問題だった。




ブチャラティがいなくなったあとも彼を想い続け、決して弱音を吐くことなく無理をして気丈に振る舞っていた彼女を守りたかった。

彼の死の悲しみを一人で耐えているななしの助けになりたかった。



だから僕はななしに告白をした。当然初めは振られたものの、根気強く「君の支えになりたい。」と想いを伝え続け、気圧されたのか、OKサインを貰った僕は晴れてななしの恋人になった。

その後は恋人として、うまくいっていたと思うしななしも僕を好いてくれた。2人でいる時間は本当に楽しかった。


だから僕はななしの心をブチャラティよりも自分の方が多く占めていると勘違いしてしまったんだ。

あわよくば彼女からブチャラティを追い出そうとしていた自分に嘲笑してしまう。





そんな思い過ごしから目が覚めたのは、たった今。

彼女の部屋に入ろうとドアノブに手をかけると、すすり泣く声が聞こえた。
それはもちろんななしの声。


何事かと思い、耳をすましていると
『………ブチャラティ……ッ。』とすがるような声がした。






僕は自分の気持ちが急激に冷めていくのがわかった。

ブチャラティへの嫉妬や、自分が今までやってきたことが無駄だったと気付いた絶望感、色んな感情がおり交ざった黒い感情が沸き上がった。





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