今日もななしは仕事で深夜遅くに帰宅した。最近はそんなことも珍しくなく、むしろななしは自ら多くの仕事を引き受け遅くに家に帰るようにしていた。
というのも、恋人でありギャングのボスであるジョルノはいつも多忙で、2人で会ったりする機会はどんどん減っていた。
そのことをななしは淋しく感じでいたが、だからと言ってわがままを言ってジョルノを困らせたくはなかった。
またななしはジョルノがギャングということは知っていて、自分が立ち入ってはいけないという境界線を感じていた。
だからななしはその淋しさを紛らわせようと、仕事に明け暮れていた。
これだけ働いていると、家に帰ればすぐに眠くなり、思い悩む暇もなく寝ることができた。
仕事中にはジョルノのことも忘れることができた。
アパートの階段を上りながら、部屋の鍵を探していると自分の部屋の前に誰かが座って扉にもたれているのが目に入った。
不振に思いながらも、近づいていくと、そこには見慣れたくせのある金髪があった。
『――ジョルノッ!!』
コートを着て、マフラーに顔を埋めたジョルノが座っていた。
どうやらななしが来るまで、扉の前で寝ていたようで「あぁ、ななしおかえり…。」だなんて、寝ぼけたように言った。
ななしは、指も鼻も頬も真っ赤にしたジョルノをすぐに家に入るように背中を押した。
そして暖かいコーヒーと毛布を渡した。
『なんで、こんな寒い真夜中に外で寝てたのよッ!』
「ななしを待っていたんですよ。今日ってななしの誕生日ですよね?連絡しても出てくれないから、ずっと待ってました。」
『えっ!あ……。忘れてた。今日誕生日か、私の。』
ジョルノはそう驚いた顔をするななしをクスリと笑うと、少し声を低くしてななしに言った。
「なんか、ななし痩せました?疲れてるみたいだ。」
『最近仕事忙しくて。全然元気だから気にしないで。』
「仕事頑張るのはいいですけど、程々にしてくださいね。」
それを聞いたななしは下を向いた。
『………ジョルノだって……。』
「えっ?」
『ジョルノだって、仕事ばっかりだよね?人の心配する前に自分のことも労ってあげてよ。』
「…僕は大丈夫ですから。」
『いつもそればっかり。私がジョルノの仕事について立ち入っちゃいけないのはわかるけど心配くらいさせてよね?』
そう言って、ななしはジョルノ抱きついた。そしてジョルノも「…ありがとう。」と言ってななしの背中に手を回した。
しばらくして「あっ!忘れるところだった。」とななしから体を離したジョルノは、ポケットをゴソゴソさがしはじめた。
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